この『DORMI』(眠りの意味)は、「眠れるクラシック音楽は」という問いに対して、ネットで選ばれたベスト10の楽曲に5曲を加えたコンピレーション・アルバムです。
確かに癒されますし、眠りに誘われるのでしょうが、春野寿美礼が歌うカッチーニの「アヴェ・マリア」では、聴き惚れて神経が音楽の方にいってしまいます。宝塚花組のトップとして人気を博した人ですから、不思議な魅力の持ち主なのは最初の声を聴いただけで感じ取りました。男性とも女性とも判別がつかない中性的な声は、性を超えて、時代を超えて、聖堂で歌うカストラートのようにも思えました。オペラ歌手のようなベルカントでもなく、ポップスでもない宝塚特有の唱法が神秘的な聴感をもたらしてくれます。
女声合唱アウラのア・カペラによるドビュッシー「月の光」も満天の星空をバックに月の光が天上から降り注ぐように思えます。ポルタメントが効果的に使用され、音楽にうねりを与えていました。
ショパンの「別れの曲」をアレンジしたクレモンティーヌの「過ぎ去った恋」は、書上奈朋子による編曲によって、効果的に多重録音されました。原曲とは違うアンニュイな香りが漂うオシャレな楽曲へと変身しています。
中孝介が歌う「アヴェ・マリア」も聴きなれたものとは全く違うシューベルトでした。際物扱いされるかも知れませんが。島唄による発声は優しいオーガニック系のサウンドです。声高に主張する音楽とは対極にあり、穏やかな感情が身体中に広がってゆくのが分かります。
宮本文昭の「メディテーション」も好きですが、宮本笑里による「亡き王女のためのパヴァーヌ」の甘く美しい演奏が心に残りました。1日の疲れをとってくれるような上品なアレンジで、健やかな眠りにつけそうです。