上條淳士のデビュー作からのファンであり、彼の全ての単行本は初版を揃え、
いまだ読み返すことが多い。この新作も雑誌連載時には一切読まずに我慢し
て、この単行本化を心待ちにしていた。彼を高く評価する私だが、この作品
は駄作と言わざるを得ない。武論尊の原作にもあまり情熱が感じられないが、
それがどうであれ作画をする上條氏の構成力も筆の勢いもプロとして読者を
圧倒させる力量に欠けている。とりわけ、画(特に人物)は以前の上條氏独
特の透明感と奥行きが完全に失われ、異常なほど平面的だ。ふた昔も前の
「TO-Y」と「SEX」が完成度としては頂点だったと思いたくはないが、この程
度のクオリティーでは、以前のようなカリスマ性をもって新規読者(新規ファ
ン)を獲得することは難しいのではないか。失敗作「8」の後に「リハビリ
的」に編集者から持ち込まれた企画というだけではないかと疑ってしまう。
昔に戻ってくれとは言わない(YOKO氏がいなければそれは無理)。しかし、
氏が本来持ち合わせているはずの卓越したセンスがあれば、まだまだ飛躍が
できるだろうと信じている。そう思わせるものが上條淳士にはある。期待を
こめて、敢えての酷評。
話は別だが、長編もさることながら彼の秀逸な短篇をこよなく愛している。
特に「ごお・うえすと」「愛ト青春ノ旅ダチ」「最後のヒーロー」。小学館
様、そろそろ短篇集の企画があってもいいのでは。