人は母のお腹の中で大きくなり、生まれた後も背が伸びる。これらみな細胞分裂の為す業。
分裂中の細胞では、DNAが複製されている。このDNAの複製により、体の設計図がすべての細胞に遺伝されるわけだ。そのDNAの複製のしくみを追うのがこの本。
「DNAポリメラーゼ」という言葉をどこかで聞いたことがあるかもしれない。このDNAポリメラーゼがDNA複製を担う仕事人だ。この仕事人はいろんな職種があって、それぞれが複製直前のDNAに寄ってたかって、各々の役まわりを果たす。
例えば、DNA複製そのものを担当する“主役”はDNAポリメラーゼα(アルファ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)。本ではDNAポリメラーゼ3姉妹として喩えられている。3姉妹で協力しあいながら複製をしていく姿が描かれる。
一方、この主役3姉妹がけっこういい加減な複製しかしないので、後始末として“脇役”のDNAポリメラーゼη(イータ)、ι(イオタ)、κ(カッパ)、そしてRev1などが東奔西走し、ミスコピーを修復する。
学者の性か、書き方は正確性重視。例えばDNA複製の全体像のところは、図はあるものの一度読みだけでは理解しづらいかも(理由はそれまでの用語を覚えていることが必要という不可抗力と、図に未解明の謎まで示されゴチャゴチャしていること)。
正確性がよい結果に転じているところも。テロメアの末端複製問題(細胞分裂のたびにDNAの末端がすり減ることが細胞の寿命を決めているのではという説)がここまで詳しく書かれてある入門書は少ない。
著者はあーでもないこーでもないと比喩を捻り出しながら書いたのだろう。喩え話は効果的。DNA複製のことがわかった気になる。読者の立場を心がけているのがよいところ。