よくもまあこんな売れなそうな傑作をこの時期に創ったもんだと、是枝監督の挑戦根性には敬服しました。カルト教団(もちろん本人たちにそういう意識はないんだろうが...)の団員の入団の前後、そして集団自決の前後、さらにその遺族(被害者家族と加害者家族)の前後がしんしんと折り重なり、そこには静寂と絶対譲れない怒りが存在し、まさに満場一致で解決出来ない人々の一番真剣な部分の、時に静か時に激しいブツかり合いが主題です。感心したのは、当初はどうせ遺族の悲しみにのみスポットライトが当たっているものと思い込んでいたのですが、むしろ主題にされているのは信者たちの無垢な真面目さ。白や黒で語れる問題ではないということがひしひしと伝わってまいります。
「幻の光」でも感じたことだが、是枝監督の作風は非常にヴェンダースのそれに近いものではないかと思われます。それは監督がヴェンダースファンだということではなく、きっとヴェンダース同様タルコフスキーや小津映画から多くを学んだのでしょう。とにかく静か。だから意味深な静寂にあまり興味のない人には酷な作品だと思います。
DVDの編集の出来としてはマズ本編があって、字幕は英語だけ入ってて、トレイラーといくらかの特典映像が挿入されているのですが、私見では同年代としてARATAと伊勢谷友介のぶらり旅映像が面白かったです。カラッカラっとした伊勢谷友介とノッタリしたARATAの生み出す不思議な空気が、なんだかとっても心地良くて、是枝監督の青年の演出の仕方の腕前にも驚きでした。さらにトレイラーの最後に、出演者みんなで「DISTANCE」ってボヤくところがえらくカッコよくて、何度も何度も巻き戻してマネしちゃいました。ああいう節々に散りばめられた小さなアイディアがいかにもモダンで質の高い監督の特性です。