これは、もう、冒険心とか、遊び心とかの次元じゃないだろう。3話オムニバス(「LAST SONG」、「SHADOWS」、「FLY」)形式で描かれるのは、どれも「逃げる男」でありながら、内容自体は万華鏡のように、ころころと色を変える。なかでも、「LAST ~(伊勢谷友介、粟田麗)」の変化の応酬は驚異的だ。「逃げる」ことから始めるストーリーは、どこかクライム・ムービーの匂いを漂わせる。そこへホラーが急に飛び込み、と思えば、これまた唐突にミュージカルへと発展し、ついにはラブ・ロマンスまで顔を覗かせる。いやはや、『DEAD END RUN』の暴走っぷりは、とにかく凄まじい。
ただ、そういう多様さが逆に作品の軽さへと繋がっている感もある。次々と形を変える本作には、掴みどころがない、というか、掴んでる暇がないのだ。さらにいうと、3話合わせて1時間弱というのもかなり軽い。僕がコーヒー一杯飲み終わる前に映画が終わってしまうぐらいに。こんな感じだから、本作に強烈なストレートの一撃を期待するのは難しいかもしれない。それでも本作を前にして決してダウンを喫しないかというと、そうでもない。何度もいうようだけどジャブが凄いのだ。一発一発が軽くても、それが止まなければ、ガードは解けず、顔を上げるのも難しい。このジャブの応酬でダメージは充分なのである。
映画から話は逸れて、本作は俳優だけ見ても、なかなか楽しい。今まで、伊勢谷友介、永瀬正敏、浅野忠信の3人を同じカテゴリーで見てきたけど、このたび3人の演技をまとめて見たら、それぞれがかなり個性的なんだと改めて気付かされた。そんなわけで、ここにもジャブ発見。ちなみに女優陣の活躍も無視できない。粟田麗のエクソシスト・プレイ(!)には震え慄くべし。