昔からLPレコード単位でマキさんの作品を聴いていた私には、今のCD盤の編集は少しなじめない。この企画自体にケチをつけるつもりはないけど、やはり抜け落ちてしまったものが多いような気がする。
やはり「浅川マキの世界」の曲は、寺山修司プロデュースのレコードバージョンがしっくりくるし、80年代の、近藤や後藤、本田、テツとのコラボものもそうだ。
今となっては、マキさんの作品はこのDARKNESSシリーズでしか聴くことができないのは、残念だ。この作品に収められなかった多数の楽曲の行方が気になる。何とか復刻してもらいたいものだ。
それは決して浅川マキのいた風景とその時代への、自己史の重ね合わせという懐古的な行為ではなく、浅川マキという、類まれなアーチストがつむぎ出した、歌の持つ根源的な力の、確認とリスペクトのためである。
マキさんは並み居る男たちの影響を受けつつ、それ以上のすばらしいものを時代やわれわれに投げ返してきた。それらの作品群は封印された闇のなかで、今も孤高のひかりを放ち、見知らぬ出会いを待ち続けている・・・
時代や世界の情勢には無関心な立場を貫いていたマキさんだったが、自らの感情や気分にはとても敏感で、とても思い切りのいいひとという印象がある。
マキさんって、雰囲気的にはニコに近いが、やっていることは、ジョニ・ミッチェルか・・・ちょっと違うな。吉田美奈子、矢野顕子ともまったく違う。
世に彼女より歌が上手く、美声の持ち主は沢山いるだろうけど、マキさん以上に、存在自体に凄みがあってしかも、官能的で艶やかな歌声の主はなかなかいない。
しいてあげれば、よく引き合いに出される、ビリー・ホリディ、美空ひばり、エディット・ピアフぐらいか・・・。死ぬかわりに歌う、生きるかわりに歌う、とでも表現すべきなのか。とにかくマキさんは「根っからの歌い手」あり続けるのだろう・・・。
マキさんの存在には、触媒みたいなところがあって、共演者の創作意欲をすごくかきたてるところがあるのは、確かなのだろう。
私的には、マキさんはジャズ・ヴォーカルというよりも、最高のブルース・シンガーだ。聴いていて人生の痛みや悲しみを分かち合えるし、聴いていてマキさんからは、明日も生きようという元気をもらえる・・・。