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22 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
浦島、羽衣伝説の蘊蓄と、事件の謎との絡ませ方が絶妙。実に面白い歴史ミステリーです!,
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レビュー対象商品: Dの複合 (新潮文庫) (文庫)
作家の伊勢忠隆は、「月刊 草枕」編集部の浜中三夫から原稿の依頼を受けた。紀行文と随筆とをまぜた読みもので、「僻地に伝説をさぐる旅」というテーマで書いて欲しいというもの。依頼を承諾した伊勢は浜中とともに、浦島伝説と羽衣伝説にゆかりのある土地を訪ねる。ところが取材旅行を始めてから、伊勢の身辺に奇妙な事件が起きるようになった。取材旅行と事件の間に、何か繋がりがあるのだろうか? 不審を抱き、あれこれと推測を巡らせる伊勢と浜中であったが、やがてふたりは殺人事件に直面することになるのだった。 とまあ、序盤の話の展開は、こんな感じ。話の経糸に、取材旅行の過程で起きる不可解な事件の謎を追いかけつつ、緯糸では、浦島や羽衣といった伝説の蘊蓄を傾ける趣向になっています。そして、このからくりに潜むあるキーワードが明らかになる件りから、思いがけない方向に話が転じていく終盤と、読み始めたら止まらない面白さ。 さらに、事件の渦中で伊勢がシャーロック・ホームズのことを思い浮かべる場面では、くすりとさせられました。そう言えばこの作品、あるホームズ譚と一脈通じるところがある話かなあと。そのホームズ譚のタイトルは、ぐっとこらえて言わずにおきましょう(笑) それと、本文庫の解説は先に読まないほうがいいですよ。作品のミソと考えられる点を明かしてしまっているので。本書の趣向にあっ と言わされるためにも、作品読了後にお読みになることをお勧めします。
11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
嫌われることを覚悟で敢えて辛口に…,
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レビュー対象商品: Dの複合 (新潮文庫) (文庫)
高橋克彦氏絶賛の一冊でしたので、読むのが楽しみでした。時間がとれたので一気に読みました。 面白かったです。 しかし… 多分、この小説が書かれた頃には、とても新鮮な題材とストーリーだったのだと思います。 民俗学・神話・歴史と推理小説の融合。 うん、新鮮だったのでしょう。 しかし… 正直なところ、この2008年の今となっては、このジャンルは余りに手垢の付きすぎたものになってしまったのかもしれません。 本当に、正直、「なんだ、これだけの話か、」と思ってしまいました。 本当に、現代の目から見れば、良くある歴史推理物のレベルでしかないのです。 多分、現代の眼から清張先生の作品をどうこう言うのは余りにも不公正なのでしょう。 先駆者たる者、幾多のフェイクを生み出してしまうことは仕方のないこと。 そして、そのフェイクにまみれてしまうと、誰が先駆者かもいずれ分からなくなってしまう。 かつて江口寿史氏がそんなことをつぶやいていたシーンが思い浮かびます。 しかし、この作品に現代のレベルから見ても超絶級の期待をお寄せになられる方もきっと少なくないと思います。 この作品は、文化遺産として考える限りにおいて、またこのジャンルの先駆的作品として見る限りにおいて、とてもすばらしいことは間違い有りませんが、 今の視点から見ると、正直余りにも「普通」「ステレオタイプ」な作品になってしまっていることに言及する書評もそれなりの意味があるのかもしれません。 ああ、出来ることなら、高橋克彦氏のように、この作品が出た当時に読みたかった…
5つ星のうち 4.0
社会派のレベルを示す佳作,
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レビュー対象商品: Dの複合 (新潮文庫) (文庫)
売れない作家の伊瀬のところに創刊間もない雑誌から民俗学をからめた紀行文の連載が依頼される。それ以来伊瀬の取材先では奇妙な事件が起こり、果ては殺人まで。伊瀬は自分が犯人の企みに巻き込まれたことに気づく…視点人物である伊瀬が、ワトソン役兼探偵役となる凡人探偵もの。随分久しぶりに読んだのですが、優れた作品だという印象を再確認しました。視点人物回りの造型が自然で、例えば伊瀬は売れない作家なので少々おかしな依頼でも受けますし、自分で動き回るだけの知識とコネと時間があります。奥さんの描写はさらに自然。状況の異常さを、仕事がらみの大量の蘊蓄と地に足の着いた人物で隠蔽しているわけですね。 この程度の蘊蓄推理ものは今ではよくありますし、本格として見ると、若干偶然に頼っている部分が多いことと細かな部分で情報の後だしがいくつかあることが気になります。それでも「社会派の旗手」である松本清張さんが1965年から1968年にかけてこういった水準の作品を書き、ベストセラーになったことを知れば、島田荘司さんや京大推理研を中心とした新本格作家たちがどれほどの覚悟で「社会派と戦う」ことにしたかを伺えるでしょう。そういう点では井沢元彦さんの「猿丸幻視行」(1980)も興味深いかと。
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