本書を初めて読んだ日のことは鮮明に覚えてます。
徹夜明けで家に戻る道中に購入。
電車内で読み始め、家に帰ってベッドに寝っころがりながら延々と読みふけって一気に読了。
そのまま疲労困憊で一昼夜眠り込んでしまいました。
本作は「狂犬病に冒された巨大なセントバーナード犬に母親と幼い息子が襲われる」といういたってシンプルな物語です。
これだけなら物語というよりは只のシチュエーションに過ぎないと思うのだが、キングは徹底したディテールによって物語を補強しており、
結果として「ある悲劇」の顛末を根こそぎ描写することに成功しています。
この設定自体からは「ホラー」というより「サスペンス/パニック」の印象が強く感じられるのだが、ここがキングたる所以だと思うのだが
やはり「人智を超えた運命に翻弄される弱き人間」の物語になっていて、その点では完全にホラーと言えます。
幼い少年が怯えてきた「押入れに潜む怪物」が発狂した巨大なセントバーナードとして実体化して襲いかかる展開からは、
降りかかる災厄を前にして試される人間の強さ(あるいは弱さ)が圧倒的な筆致で描かれております。
そこで戦うのか、逃げるのか。
たとえ立ち向かったとしても勝利するとは限らない。
その苦しみをも見事に描き切った正に「力作」だと思います。