昨年発表された「
I Speak Because I Can」において、ひたすらギター一本と向き合いぼそぼそと語る年齢不相応の落ち着いた
雰囲気が初期のJoni Mitchellを彷彿とさせ、語り口から漂う知的さと深みが私の心を捉えて離さなかったLaura Marling。
前作から1年で早くも発表となった3作目は、前作よりもバンド色を強めサウンドはより豊かに逞しく、また彼女自身の歌の表情
も多彩になっており、全体としてより外側に開かれた空気が印象的。比較したJoni Mitchellの作品で言うと、前作が「Blue」で本
作は「Court and Spark」に近い印象と例えると分かり易いか、よりポピュラー度が増し聴き易くなっている。
冒頭の「The Muse」からして前作とは受ける雰囲気が異なる。ピアノ・バンジョー等が豊かに跳ねるバンド・サウンド。そこに乗
る彼女の声も前作では余り見られなかった明るい表情。この新しい空気を受け入れられるか否かで、本作に対する印象が分
かれるかも。「I Was Just a Card」等での声を押し出すような強い表現も新しい彼女の一面だが、これはこれで美しく惹かれる
。一方「Night After Night」等においてギター一本で思慮深く弾き語る際の陰影ある表現と味わい深さも失われていない。
本作の色が最もうまく表れた名曲が「The Beast」。前半ではギター一本で音数少ない空間に、なんとも言えないほろ苦さを纏
った彼女の声が漂う。まだ21歳だというのにこの落ち着いた語り部は恐ろしい位だが同時に不思議な程心が落ち着く。
曲の後半では、タフなバンド・サウンドに盛り上がり彼女自身の口調も強く変化しるが、決して理性を失うことなく強く言葉を音
に刻んでいく彼女の表情は本作で聴ける新しい側面だと思う。
前作の様にひたすら彼女の内省的な表情を好む方は購入前に各種サイトで試聴したほうが良いかもしれない。従来よりも多彩
な表情を見せる彼女の歌、本作を皮切りにより多くの人に彼女の存在が知られて欲しいと思う。