デヴィッド・リンチは昔から自身の映画のサントラのプロデュースや、ミュージッククリップビデオの制作に関わってきたので、リンチ自身が音楽をやることにはそれほど驚かなかったが、リンチの個人名義でフルアルバムを出すとは思わなかった。
非常に強引に本作を言い表すと、「リンチ映画のサントラ的世界音楽」ということがいえるだろう。
しかしボーカル曲なので、その辺は完全にサントラと同じとは言えない。
リンチは昔から不思議な抽象画を描いていて、個展を日本でも開いたことがあるのだが、やはり非常にダークな絵画だったので、このアルバムを聞く前も「きっとダークな音楽なのだろう」という想像をしていたが、やはりダークであった。
さて、前置きはこれくらいにしておいて、本作の評価だが、期待した以上の音楽では無かったというのが正直な感想である。
だからといって、出来が悪いというわけではないのだが、もともと音楽の人ではないわけだから、もっと過激にやって欲しかったということも思った。
日本盤はボーナストラックを入れて全15曲なのだが、最初から最後まであまり曲調の変化がなく、期待が大きい分、やや肩透かしを食らった気になった。
リズムにしても割りと単純なリズムが続いていくので、もっと遊んで欲しかったし、ここはもう少しエフェクトを効かせてダブっぽくして欲しい、などと勝手なことを思いながら取りあえず一回聴いてみた。
それから何回か聴くと、不思議とこの「リンチワールドも悪くない」というように感じ始め、この「淡々さ」もそれなりに面白いと、感じるようになっていった。
やはりこの作品は1回では分からないので、何回か聞く必要があるアルバムだ。
リンチ自身が歌っている曲もあれば、他の人に歌ってもらってもらっている曲もある。
しかしそういうことも音楽を聴いているうちに関係なくなり、音楽の淡々とした進行を、自ら追うようになる。
そしてここではじめて気がつく、「ああ、これは完全にデヴィッド・リンチの映画の展開そのものだ」ということに。
だから流して聞くような音楽ではないし、真剣に聴く音楽なのだと、私には思えます。
「好き、嫌い」は確実に別れる音楽ですが、普通のロックやダンスミュージックとは全く違うということに気づけば、彼の映画のように楽しめるはずです・・・・たぶん。