1980年代初めに世界で一大ブームを巻き起こした科学番組のDVD。天文学者でコーネル大学教授であったカール・セーガン博士が宇宙と地球の歴史、それに伴う生物の進化や、人類の宇宙の探求の歴史について解りやすく解説している。懐かしくて買ったDVDだが、(80年当時、私は中学生だった)今見てもとても新鮮で面白い。こういった科学番組は、最先端の情報を放送しなくては古びてしまいそうだが、この番組がいまだに新鮮な輝きを失っていない。
単なる宇宙と地球の進化の歴史を追うにとどまらず、そこで誕生した人類がどのように知的進化をとげたか、そして科学の進歩にはかならずそれに伴う倫理観が必要であることを全編を通して説いている。倫理観の伴わない技術だけの進化はやがてself distraction(自滅)の道をたどるということ、そして我々が地球という惑星の一員をしての自覚を持たなくてはいけないということを主張している。この番組が放送された80年代初頭は、米とソ連による冷戦、世界的な核戦争の危機に見舞われていた時代でもあった。ソ連は崩壊し、冷戦はなくなったけれど、今度はまた別の国が核開発を行っている。環境破壊も80年代よりひどくなり、地球はやはり惑星的な危機に陥りつつある。最終巻でupdateとしてカール・セーガン博士が付け加えたメッセージは、一人一人が真摯に受け止めなくてはいけない内容だと思う。
映像を見ていて楽しいのは、理科の教科書に出てくる偉人たちが映像で登場すること。馬鹿馬鹿しい宴会をして騒ぐティコ・ブラーエの傍で、苦々しい表情をする生真面目なケプラー、井戸のつるべのような紐で角度を調節するクラシックな望遠鏡で星の観察をするホイヘンス。花火の音が響くパレードの日に手作りのロケットを飛ばす若きゴダート。余裕しゃくしゃくで助手に望遠鏡での長時間露光を指示するフマーソン(ハッブルの弟子)。服装なども時代に忠実で、映画の1シーンを見るように生き生きと演じられており、彼らが宇宙にはせた思いが伝わってくる。また、カール・セーガン博士自身がNYブルックリンの小学校に戻って授業をする「ようこそ先輩」のような場面もあり、子供のころの好奇心をいつまでも大切にもち続けた博士自身の天文学に対する熱意が感じられる。
このDVDは7枚セットで、全部で13エピソードから成っている。折りたたみ式の紙箱に入っていて、7枚セットで価格もお得だと思う。字幕は日本語もあり(他の人がレビューで指摘しているように少し間違いがある)リージョンフリーなので、日本のプレイヤーでも再生が可能。字幕は他にも中国語やスペイン語もあるが、聴覚障害者用に英語の字幕もついている。天文、生物用語を沢山覚えたい人は英語の字幕で見たり、音声だけヒアリング教材として利用しても楽しいと思う。
ちっぽけな星に住む人類が、今広大な宇宙へと旅立とうとしている時代。人の一生もまた、無知から好奇心を原動力として広大な知識の海へと旅するようなものだとカール・セーガン博士は言っている。惜しくも96年12月に62歳という若すぎる年齢で亡くなられたけれど、この番組はこれからも色あせることがないと思う。