これもずいぶん聴きました。最初の出会いは大昔のジャズ喫茶。なにかファンキーな曲がかかっているといつも「赤いジャケット」が「演奏中」のラックに飾ってあったものです。赤いのはたいていモブレーの「ディッピン」か、モーガンの「コーンブレッド」だった。「ヨッコラショ」というゆっくりした出だしのところはこの頃のファンキーな曲の共通点で、この二つもよく似ていた。この二つにはさらに共通点がある。それはボサノバがはいっていたことです。ディッピンの場合は「リカード・ボッサ」、そしてこちらの場合は「セオラ」で、自分はこの「セオラ」がことのほかお気に入りでした。ファンキーの喧騒の後の静かな「セオラ」は高ぶった神経を冷却してくれて、これが無かったらジャズから現実の世界には戻れなかったでしょう。「セオラ」の清涼感がたまりません。
驚くべきは、「ディッピン」と「コーンブレッド」というタイトル曲はもう聴かれることはなくなったのに、「リカード・ボッサ・ノヴァ」と「セオラ」は今でも時々聴かれることで、それも共通しています。ファンキーナンバーはファンキージャズの衰退とともに忘れ去られたが、ボサノバは残った、それも、もう50年は経とうと言うのに。
もっとも「リカード・ボッサ・ノヴァ」はもともとブラジルにあった曲(1959年)だそうでのちに「ギフト」という別名でも知られました。一方の「セオラ」はモーガンがこのアルバムで作曲した(1965年)と言うところが違いますが、それなのに「セオラ」は、今ではボサノバのスタンダードと化していて、試しに米国のアマゾンで「セオラ」を検索するとジャズからラテンまでいろいろ数十種類もの演奏が出てきます。モーガン恐るべしです。