会社とは何か、この疑問に取り組んだ本だ。
エージェンシー理論では会社と会社の境界がどこにあるかはっきりしないし、会社内で監視したほうが会社外から監視されるよりも安上がりになる理由も述べられない。
契約を書くことそれ自体にコストがかかることを強調した取引費用経済学でも、ひとつの会社にまとめたときにホールドアップ問題がなぜ解決されるかは説明していない。
一方Grossman&Hart(1988)やHart&Moore(1990)が提唱する所有権アプローチでは、「契約が不完備なときには、そこで決められていないものについては所有者は好きに使う権利(residual control right)を持っている」という発想からスタートする。会社を人(経営能力みたいなものか)とモノ(機械とか労働とか)にわけて、より上手に使える人に任せるということになれば二つの会社は合併するし、そうでないときは独立であるということになる。こうして会社の境界が示されることになった。
後半部はより実務的になっている。経営者がサボったりロクでもないことに投資したりといったことを防ぐため、債権契約が結ばれることを示している。倒産のさせ方を語る章では、会社が倒産した際に「何をすべきか」と「誰がどのくらい取るべきか」を分けて論じなくてはならないとしている。また投票の仕方を論じた章では、一株一票にするのがいかなるときに理想的かを示す。
「会社って何だろう?」という素朴な質問に答えるところから始まって、実務的な問題に解決策を与えようと努力するところで終わっている。確かに実務家には不満な点も残ろうが、学術専門書としては第一級のものではなかろうか。