二年前ほどだったか、BBCラジオを聴いていたらモリッシーが登場した。司会者の女性が、「モリッシー、なぜ大学に進学しなかったの?」と彼に質問し、私はそれが重要な問いかけであることを答えを聞いてから気付いた。労働者階級だったから。貧しかったから。労働者階級に「教育」が入ってきたのは自分の世代よりすこし後だったから。とても苦々しい、とても悲しい話だ、とモリッシーは答えた。
コールドプレイのメンバーが全員大卒であることに驚いた記憶がある。時代が移ったものだなあと。近年、英国で階級移動が停止したそうだ。「学力による階級移動」がほぼ完了したのだろうが、はっきり言うとヤバイので誰も言わない。そして「階級上昇」の先にあるのがThe City(金融街)だったりするのが幸せな形なのかも分からない。
仮に生まれるのが十年遅かったら、モリッシーはロック野郎になったのだろうか。天才ギター少年、ジョニー・マーに見出された彼はロックバンドの一員になるが、改めて見ると浮いていた。彼はマンチェスター訛りを喋らない。綺麗な英語を操り、折り目正しくインタビューを受ける地方出の労働者階級青年、という不思議な存在になった。一方、ジョニー・マーはモリッシーと出会わなくともギター職人の道を歩んだだろう。
天与の才のままに名ギタリストの道を直進した青年の爽やかな光輝と、運命を憎悪した文学青年のほの暗い情念が、ロックンロールという領域でだけ可能な気高い愛の結晶になって時代を輝かせた。こういう奇妙で情熱的な関係はあまり長続きしないし、青年時代を超えて再現出来るものでもない。今後ファンが百年待ってもThe Smithsは再結成しない。
The Smithsのベスト盤は山ほどある。そういうショーバイには乗りませんよ、と購入を拒んできたが、全曲ほとんど自動的に口ずさめるほど聴いてきたファンのこれが最後のお勤めだと感じてこのセットは買ってみた。思春期に彼らにお世話になった方々は財布の紐を緩める時が来た。そもそもThe Smithsに捨て曲なしなのだから「ベスト盤」は不可能なのである。全アルバム持っているほかない。