この5枚組+1枚おまけのCDは買いです。解説書は欧文で和文はない。ケースは紙製で厚紙の箱に入れてあり、お世辞にもよいとはいえない。しかしです。グルダのモーツアルト演奏は素晴らしい。弱音も強音も、一つ一つが粒だち、音の響きが素晴らしい。多分もっと素晴らしいのは、そのリズムに躍動感があることであり、モーツアルトとグルダが渾然一体となっている。幼子のリズム感のような生理的次元で溶け合っている。そしてどの曲を聴いても聴き終えた後にある種の活気が残る。聴いているとき何ほどすごく感じても聴き終えた後に何も残らないものもあるだけに、これは貴重です。そんなわけで朝出かける前に一曲は聴く。同じ理由で夜寝る前には聴きません。グルダが自宅で録音したテープが残されていて、ご子息がそのCD化を認めたという。録音もよい状態である。一部分に音のつぶれがあり、耳を澄ましていれば ン?と思う程度で些細なもの。録音の際のものらしい。ピアノはベーゼンドルファーでグルダが愛用したという。グルダはベートーベンのピアノソナタは全曲録音を残しているのに、どうしてモーツアルトは自宅で録音までしながら発表しなかったのか理解できない。グルダに惚れてベートーベンのピアノソナタも聴いたが、心にちっとも生き生き感が湧かない。多分あのリズム感がベートーベンとは合わないのではないかしら。