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従来、国際競争力を議論する代表的な理論的枠組みは比較生産費に基づく国際貿易論であったが、その分析枠組みは技術や要素条件を所与とした静学的アプローチであり、かつ主に貿易を通じた国際経済関係を前提としたものであった。
しかし、現実には、国の競争優位は少数の関連産業の集積に支えられており、それら企業の継続的なイノベーションや改良、そして企業の多国籍化こそが競争優位の重要な源泉となっていることをポーターは指摘した。そして彼の分析の焦点は、それら企業集積内で発生するイノベーションの源泉は何かという動学的側面に向けられる。
その上で、ポーターは競争優位を分析する単位として従来の産業という区分ではなく、関連産業の集積であるクラスターという概念を新たに提示する。さらに、イノベーションに必要な諸条件を、「ダイヤモンド」―「企業の戦略・及びライバル間競争」、「要素条件」、「需要条件」、「関連・支援産業」―として整理する。そしてこれら各要素の相互作用のシステムとして国の競争優位形成のメカニズムを明らかにしたのである。この枠組みにより過去の様々な国々の成功例を解明してゆく様は、知的感動を呼び起こすのに十分である。
本書の提言は、経済学・経営学などの学問にとどまらず、政府の政策立案にも多大な影響を与えた。本書の影響で、政府の政策は従来の自由放任か介入かという狭い枠組みではなく、クラスターの発展に必要な諸政策―ベンチャーキャピタルの育成、産学連携、高度で専門的な教育・研究機関の整備など―に軸を移したのである。
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