曲そのものについてはその後の別テイクやライブで聴かれた方も多いでしょう。僕がここで一番申し上げたいことは、ここずっともうこのアルバムのような教授のピアノ演奏は聴けないから、最近興味をもたれた方にはやっぱり一度聴いてほしいな、ということです。録音の仕方や曲の系統にもよるのでしょうが、変にリズムが伸びたり縮んだりすることなく、音の強弱もデフォルメされすぎず、そうしたストイックなんだけどあふれ出てくる何かを感じる演奏は最近では個人的にはようやく「CASA」で聴けて嬉しかったです。でも「CASA」はジョビンへのトリビュート。アレンジの要素で教授は出てても、曲そのものでの繊細さというかナイーブさが散りばめられている本作はやはり最近の教授の作品ではあまり聴けなくなってきている気がします。そうしたはかなげで壊れてしまいそうな繊細な曲想と演奏の絶妙さをぜひ味わってみてほしいんです。それと、繊細さだけでなく、ピアノって打鍵するのねって、阿保かといわれるかもしれませんが、改めて感じたのもこのアルバムでした。ひとつひとつの音の存在感といっていいやら、粒々の塊といっていいやら、表現に困りますが、まあ他では感じられない、いわゆるクラシックの演奏とも違う、独特な味わいも楽しめます。僕の好きな教授の部分がたくさん含まれているので紹介させて貰いました。