クレメンテの油彩や水彩画、ドローイングに合わせて本書が取り上げているのは、インドの神秘主義や、祈祷、オリフィス(穴、口)、家族の絆、存在と無を中心とした数々の形而上・形而下的な事柄などである。「Rooms」というエッセイでフランチェスコ・ベリッツィは、洞窟壁画から、ドイツ神秘主義の創始者エックハルトの魂に関する教説、ローマルネッサンス、クレメンテの壁画まで綿々と続く1本の糸をたどりながら、「発祥の地が転移するトランスモダンの感覚」について解説している。
「要するに、個々の画家の歩み、画家の足跡としての作品のひとつひとつが、この円錐状の宇宙において唯一無二の存在というわけだ。円錐状の宇宙とはすなわち、エロスの誕生によって始まったとされる螺旋状の宇宙のことである。螺旋という曲線運動は必然的に死の不安や恐怖の観念と結びついているが、それは同時に再生の喜びにも結びつくのである…」
性や自己、精神的なオブセッションを自らさらけ出すクレメンテの芸術は、常に強烈な色彩から伝統的な表現技法に至るさまざまな手法を用いながらそれらを探求し続ける。それは、25年にわたってアートシーンを広く支配してきた、生気のない、型に縛られたコンセプチュアルアートの対極に位置するもので、胸のすくような痛烈な快感を覚える。美術史家のジェームス・エルキンスは、大学院の学生に対して、モネやその他の画家の作品を一筆一筆模写させ、「絵画とは何か」(『What Painting Is』はエルキンスの近著のタイトル)を感じとらせているという。クレメンテはそれをさらに一歩進めて実演しながら、絵画のもつ可能性について教えてくれる。その無限の可能性にどっぷり浸ることができるかどうかは私たちしだいである。
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