1984年8月のロス・アンジェルス。開会式のオリンピック・スタジアムで奏でられた20世紀アメリカを代表する音楽作品の最後を飾ったのが、A CHOLUS LINEの主題曲“ONE”だった。この作品はロンドン・ミュージカルがブロードウェイに登場するまでの間、史上最長のロングランを記録している。とはいえこの作品に対する賞賛は今も変わりはない。それはこの作品が所謂“バックステージもの”としてブロードウェイの現実とそこに集まる人間達の夢と憧れ、そしてそれに挑戦する姿を生き生きと描き、それを見つめる眼差しに人間に対する優しさを感じさせるからである。このアルバムを聴きながら目を閉じると、来日公演や劇団四季のステージがそのまま鮮やかに蘇ってくる。ほとばしる汗、そして1つ1つの台詞がこれほど切実に観客の胸をとらえて放さない作品も、そう多くはない。それはこの作品がほぼ事実に近い形の上に成り立っているからである。多くの人種が行き交うニューヨーク、そこは一夜にしてチャンスをモノにできる可能性に満ちた場所であるものの、一方ではベトナム戦争の泥沼に苦しむアメリカという大国の苦悩もある。そうした時代を写し出す鏡としてこの作品は“ピュリツァー賞”をも受賞している。“夢や憧れだけで生きていくことは難しい。けれど夢や憧れがなければ人生は何と空しいモノだろう。だから私達は夢に挑む人々に心からの讃辞と敬意を贈る”、この作品に携わった全ての関係者は恐らくこうした言葉を残したかったのだろう。だから作品のエンディング曲“ONE!”はステージ一杯に広がったミラーに出演者全員の後ろ姿を写し出す。この作品は人間への大いなる讃歌である。