既に過去数回に亘ってリリースを続けているRCA音源のルービンシュタイン・ショパン全集で、特にこのセットの為に新しいリマスタリングが行われたわけではないので、言ってみれば焼き直しのリイシューに過ぎないが、前回の11枚組を、曲目を変更せずに順番を入れ替えて10枚にまとめ、装丁を一新したところに価値がある。
CDの殆どが、彼が新即物主義的な解釈に移った後の56年から67年にかけてのステレオ録音で、一見あっさりした表現に隠された筋の通った解釈には真似のできない深みがある。確かに現代に生きる私達にはルービンシュタイン以上にスマートで、目の醒めるような鮮やかな演奏が当たり前になっているが、彼の一種冒し難いまでの風格や情緒と、特にマズルカ集で聴かせる、洗練された中にも彼らの祖国ポーランドの民族的な郷愁を漂わせた特有の佇まいは、替え難い魅力に溢れている。彼は時代によって著しく演奏スタイルを変えたピアニストだが、このセットでは9枚目の46年モノラル盤だけが僅かに、過ぎ去った華やかなヴィルトゥオーソ時代の片鱗を残していて興味深い。
曲順は以下の通り
1.ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調『葬送』及び第3番ロ短調、舟歌、子守唄
2.バラード及びスケルツォ全曲、タランテッラ変イ長調
3.ポロネーズ全曲
4.ワルツ及び即興曲全曲、ボレロイ長調
5−6.ノクターン全曲
7−8.マズルカ全曲
9.24のプレリュード、子守唄、舟歌、ソナタ第2番及び即興曲第3番(46年モノラル録音)
10.ピアノ協奏曲第1番ホ短調及び第2番ヘ短調、三つの新しい練習曲