マウリツィオ・ポリーニ18歳の録音で、ショパンの協奏曲ではコンクールの時のものを除けば、現在までに彼がのこした唯一のセッションだ。同年のショパン・コンクールでは西側のピアニストとして始めての優勝という快挙を遂げた直後に行った録音で、オーケストラはパウル・クレツキ指揮のフィルハーモニア管弦楽団。
押さえがたい迸るような情熱に溢れていながら、ある意味での知的な冷徹さを併せ持った、その余りにも清冽な表現はショパンの音楽のひとつの究極の姿ではないだろうか。確かにこの演奏は若き日のポリーニにしか聴くことのできないものだが、彼のその後の演奏を支配することになる、一音一音を徹底して粒立たせるメカニズムを駆使しながら歌いこんでいく奏法を既に会得していたことも理解できる。ショパン弾きの彼がこの曲に二度と取り組まない理由は、おそらく彼自身これ以上納得のいく演奏ができないからかも知れない。まさに一期一会が産み出した歴史的な名演だ。
更にこのCDには68年に録音された6曲の小品が収められている。それは長い沈黙の後、事実上彼の楽壇復帰のきっかけになった演奏で、これらは後に再録音もされているので後年の芸風との違いを聴き比べることができる。