舞台は1930年代のロスアンゼルス。市警を退職し今は素行調査専門の私立探偵を営むジェイク・ギテスのもとに市水道電力局長モーレイの妻と名乗る女が訪れ、夫の浮気調査を依頼するが、それは仕組まれた殺人事件への序曲だった。中華人街におけるクライマックスシーンで暴れるジェイクを助手のウォルシュが抱きかかえていう"Forget it, Jake--It's Chinatown".当時の東洋系移民蔑視の風土と金権政治を象徴するような科白だ。ストーリーも構成も登場人物も実によく練られていると思う。ストーリーの下敷きになったのは1900年代初めの悪名高いロスアンゼルス水源開発スキャンダル「The Rape of the Owens Vally」。モーレイのモデルは開発責任者Mulhollandがである(Mulholland Driveという道路名にその名を残す)。
伏線の構成も見事だが、一回読んだだけではそれと気付かないものもある。例:シーン184(モーレイ家の化粧室ー鏡)傷の手当てを受けながらジェイクがモーレイ夫人に言う"I thought I was keeping someone from being hurt, and I actually ended up making sure they were hurt".(中華街が勤務地であった市警在職時代のこと)当事者に危害が及ばないようにとの配慮はかえって仇となるだ(だからそんな仕事がいやになって市警から退職した)。これは大団円への皮肉な伏線となっている。
何回読んでも何か新しい発見をする。それくらいすばらしい出来栄えのシナリオだ。