日本に一時帰国する時に乗り継ぎで寄ったシンガポールの空港の本屋に、この本が山と積まれていた。この本のことはアマゾン・コムを通じて知っていたので、躊躇なく買って、空港のプールで泳いだ時間以外はこの本を読んでいた。飛行機の中でも読んで、新潟に帰る新幹線の中でも読んでいた。おもしろかった。
本の題名、「Change of Heart」と、キャッチフレーズの、Would you grant your enemy’s dying wish to save your child’s life?からも伺えるように、夫と娘を殺した男が死刑の判決を受けた後で、心臓病の持病を抱えるもう一人の娘(殺された娘の妹)、に自分の心臓の提供を申し出る、という、作者は相変わらず「My Sister’s Keeper」の時に見せたような大胆な発想を背景として話を進めていく。
作者がこの話の中で伝えたかったことは、死刑制度の賛否、人間の尊厳と宗教とのかかわり、アメリカの中のゆがんだ社会、親として或いは妻としての葛藤、一方でそれらの混沌とした問題を何とか解決したいと奔走する良き人たちの活躍などであると思うのだが、難しい問題に取り組んでいる作者の真摯な態度がひしひしと伝わってくる。
一方で、ストーリー性の見事さはさすがで、447ページという大作ではあるが退屈しなかった。宗教問題の記述については原文も内容も中々理解できなくてつらかったが、筋書きは十分に追うことが出来た。おかしかったのは、作中で弁護士が、「John Grishamではあるまいし、」と言うところで、いかにこのベストセラー作家がアメリカ社会に浸透しているかを思い知った。
これ以上書くことはこれからこの本を読む人の興味を失わせることになるので差し控えるが、中々の力作であり今後反響を呼ぶ本になるであろう、と最後に言っておきたい。