立ち退きを迫られ嫌がらせを受けるポルノ映画館の息子・水村と
華々しく水泳部で活躍する九条との出会い。
水村は心の希望に、九条は忘れらずに、お互いを心の底で思いながら何食わぬ顔で日常を過ごしやがて再会します。
学校では笑顔でふるまう水村ですが、九条はやがて笑顔の奥に水村が置かれた深刻な状況に気付きはじめます。
「セブンデイズ」の雰囲気に似ているということで読み始めました。
「セブンデイズ」が春か秋の美しい夕焼けだとすると、
「チャンス」は夏の焼けつく白い日差しと影といいましょうか。
さらりとした絵柄に似合わない厳しい現実が、夢をみているような不思議な雰囲気で描かれています。
水村と九条の恐れつつお互いを想う過程が繊細で切なく描かれていて、
特に独特のセリフ・間合いにぐっと引き込まれました。
風俗店のある路地裏、焼けつくような日差し、濃い影、夕暮れ、電車の音、蝉の死骸、
静まり返った部屋に響く風鈴の音、ぎゅっと抱きしめる手触り…
情景が非常にリアルに感じられるのはこの作家さんだからこその巧さでしょう。
絵柄とシビアさが対照的で独特の雰囲気の深い味わいになっています。
確かになかなかいない作家さんだと思います。
お勧めです。