以前、奈良氏はキャラクタリズムから脱するように作風を移行した村瀬恭子氏や杉戸洋氏の作品を評して次のような言葉を残している。
「これからは、そんな絵が、高いクオリティを携えたそんな絵の理解が深まっていって、どうも自分のようにキャラクター的なものが画面を占領している流れってのは、下火になっていく気がする。」(ブログ「奈良美智の日々」2010.4.12より」。)
この言葉は近年の奈良氏の自己批評として鍵になるように思えて印象に残っているのだが、実際、同じ2010年に出たこの作品集では奈良氏の創るキャラクター達は平面作品を飛び出し、セラミックで作られた立体作品となった。制作自体は2007年から3年程続けて信楽で行われたものだが、上述のような問題意識を抱えつつ焼き物に対峙しながら、作家は何かを掴んだのではないかと期待してしまう。これまでも立体作品は存在していたが、以前は平面作品と並べて展示する際のアクセントのような意味合いの方が強かった訳で、立体作品のみが収められた本書の意味合いは決して小さくはないように予感する。ただ、この立体シリーズが今後平面作品にどう生きるのかということは、2012年夏に予定されている横浜市美術館での個展を待たねばなるまい。