自分の詩を自分で歌う。そんなシンプルなことが、まだ珍しかった時代、というよりこの人から始まった、と言っていいのかもしれないくらい偉大な女性です。
伝説の名盤「タペストリー」の直後、そして私生活では二度目の結婚の後、と彼女にとって最も幸せを謳歌しているんだなぁ、という感覚が、解説を通さなくても、彼女の雄弁な声を通して聴く者に伝わってきます。
一つの舞台。始めは一人ピアノと向かい合ってわずかに緊張しながら、やがてベース、バイオリン、と信頼する友人たちを招き、最後にはジェイムス・テイラーの“サプライズ”…。
観客のどよめき、感動、讃美の声が、怒涛のように聞こえてきます。演奏する彼女も、それに勇気付けられるように世界にのめり込んでゆきます。
わずかな伴奏と、技巧ではない歌唱力と。そして一途に耳を傾ける観客がいるというだけで、こんなにも豊かな時間を造り、多くの人が至福を共有できるものか、という音楽というものの原点とも言えるステージです。
私は、この一枚で、時代を遡って彼女の最高の瞬間を共有することができました。