邦題『ネモ船長と海底都市』
19世紀半ばの大西洋。洋上を行くイギリス行きの船が、嵐に巻き込まれて
難破する。何人かの乗客は海中に投げ出され、海の藻屑と消えつつあった。
―とその時、どこからともなく、謎の救助隊が現れ、米上院議員フレーザー
(チャック・コナーズ)を始め計6人を助け、不思議な潜水艦へと連れて行く。
艦内で、意識を戻した6人は、船長だというネモ(ロバート・ライアン)に対面
する…。
ジュール・ヴェルヌの原作に着想を得た冒険映画の佳作。基本的には、ディ
ズニーの『
海底2万マイル [DVD]』(54)と同じ題材だが、活劇的見せ場に乏し
く、スケール的にはずいぶんと小粒な印象の作品になっている。当時のヴェト
ナム反戦運動を反映しているのか、ネモの人類に対する不信、厭世観、そし
て、平和な理想郷での生活の描写などは(ヴェルヌの原作にもあるものの)、
時代の空気を感じさせる。
どちらかというと、子ども向けに作られた作品のようで、物語の主軸となる
べき、ネモ(理想)対フレーザー(現実)の心理的葛藤、対立などには深く切り
込むことをせず、原作にある強い文明批判などは感じられない。ならば、血
沸き肉踊る冒険活劇になっているのかというと、矢継ぎ早に、見せ場を用意
するというサービス精神もあまり感じられない。予算の都合もあったのだろ
うが(ミニチュアや美術は頑張っている)、せっかくの海底冒険ものにもかか
わらず、襲い来る怪物(?)が、実際の小さなサメと(ちょっと稚拙な出来の)
巨大エイだけというのでは、さびしい。全編、気楽に観られるが、ヒル監督
の演出に物足りなさを感じる作品だ。せめてもの救いは、ロバート・ライアン
演じる威厳と気品溢れるネモの姿を観られる点だろう。
本DVD-Rは、米Warner Archiveのオン・デマンド・DVD-R。リマスター、レス
トアされていない米TCMの放映用素材をマスターにしているが、画質(2.35:1
スクイーズ)、音質ともに良好だ。本シリーズにしては珍しく、予告編(4:3スタ
ンダード)が収録。英語字幕未収録。米盤のDVD-Rだが、R-0(=All)なので、
日本のR-2プレーヤーで視聴可能だ。