ワインに関しては、あまり人に後れを取らずに必要な情報は入手することができるのだが、その他については誠に疎いものがある、と、普段から感じている。
海外から来日するアーチストについても、何度も公演を繰り返し熱狂的な多くのファンを作りあげているにも関わらず、そんな状況を知らないままでいる場合が多い。都会に住んでいると、電車の中吊りや街頭の広告などで日常的に見聞きする機会も多いと思うのだが、当地ではなかなかそうもいかない。TVの視聴傾向にも関わる問題なのかもしれない。
5月11日のBSプレミアムで放映された“谷村新司のSHOW TIME”は、ピアニストの貴公子と呼ばれている「リチャード.クレイダーマン」のインタビュー番組であった。
番組を挟んで紹介される作品に「渚のアデリーヌBallade Pour Adeline」があったが、とても「綺麗なメロディーだなー」と、素直に受け入れることができる曲で、自然に、クレイダーマンの世界に引き込まれていくようであった。聞けば、彼のデビュー曲で代表作だそうだ。早速アマゾンでCD「リチャード.クレイダーマン.オリジナル.ヒット」を購入した。Disc1と2の2枚組である。
インタビューの中で非常に興味深いやり取りがあった。大要を示せば以下のようになる。
谷村新司
「僕はずっと、リチャードさんが自分で作曲したものを演奏していると思っていましたが?」
リチャード
「チームで作っています。才能溢れる2人の中に自分も入れて貰って、30年間やっています」
谷村新司
「ポールさんは鼻歌で歌を作っていると聞きましたが、本当ですか?」
リチャード
「そう、鼻歌を録音するんです。オリジナル曲を作っている時に、彼は楽器を演奏しませんから、楽譜の代わりに声帯を使ってメロディーをつくり、それを鼻歌にして録音するんです。だから彼は、いつでも録音機を身近に置いてます。事務所でも車でも自宅でも。旅行に出かけるときも、必ず持っていきますよ。」
谷村新司
「いやー驚きましたねー」。
どうやら、ポール.ドゥ.センヌヴィルPAUL De SNEEDVILLEが着想したメロディーを鼻歌にして録音し、それをオリヴィエ.トゥッサンOLIVIER TOUSSAINTが譜面化し編曲した作品を、リチャード.クレイダーマンRICHARD CLAYDERMANがピアノで演奏する、という流れとなるのだそうだ。
1953年生まれのクレイダーマンは、ポール.ドゥ.センヌヴィルやオリヴィエ.トゥッサンにその才能を見出されるまで、故郷ロマンヴィルROMEOVILLEで過ごしたと言う。
ロマンヴィルはパリ近郊の街である。
広沢虎造の「江戸っ子だってねー」「神田の生まれよ」「そうだってねぇ」の名調子がここらあたりまで来ると、"清水次郎長伝"もいよいよ佳境に入ってくるのだが、ロマンヴィルがパリ近郊とあっては、「巴里っ子だってねー」「シャンゼリゼの生まれよ」「そうだってねぇ」とはいかない。しかし、とても都会的な雰囲気を漂わせ、繊細な心遣いが息づくインタビューを観ていると、巴里の長い歴史の中で今を生きるクレイダーマンというピアニストを、身近な存在に感じたのである。
彼が生まれてから58年、日本で初リサイタルを行ってから30年近く経って、CDを介して初めて出会ったことになるのだが、偶然とはいえ、誠に不思議な思いがするのである。
Disc1と2を聞き進むと「どこかで耳にしたような曲だなー」と思うものが、いくつかある。内封されている栞を見ると、TV局系のドラマの主題曲やCMなどのタイアップ曲がいくつか収録されていていることが分った。
世間から疎いのも、ここまでくると「ご立派!」ということになろうか。