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現在,プロセサとメモリーはこの条件を満たしつつある。通信速度も1ケタ低いが100Mビット/秒の光ファイバが家庭に入りつつある。本書は,こうした条件がそろったことでやってくる社会を「サイバー・ネット・コンピューティング(CNC)」と命名して,その具体像を展望している。そうした意味では,10年前の「ギガの時代」コンセプトの続きを考察した本と言ってよいだろう。
CNCとは,筆者らの言葉を借りると「情報通信インフラの整備が進展するとともに,ネットワークを介したコンテンツおよびサービスの提供がビジネスとして成立し,普及する社会」である。これだけでは「何を今さら」ということになってしまうが,その特徴を「所有と使用の分離」だとする指摘は面白い。プログラムもコンテンツも,さらにはコンピューティング・パワーですら手元に置くことなく,必要に応じてネットから引き出すようになるというのである。
DVDを買ってもそれを何回見るのか。パソコン用のソフトウエアを購入してもそれを実際に何回利用するのか。そう考えていくと,プログラムやコンテンツをネット経由で本当に必要とするときだけ利用するという考え方には,確かに一理ある。インターネットを利用した分散コンピューティングも,いくつかのプロジェクトがすでに動いている。あと一押しすれば,確かにネット全体に対価を払って計算能力を購入する仕組みに到達できそうだ。
本書は,さらに進んでCNC実現のために必要な要素を抽出している。「オープン・スタンダード」である。今後はワープロ独自の文書ファイル・フォーマットではなく,XMLに代表されるオープンな文書規格やMPEGに代表されるオープンなデータ・フォーマットが重要になるという。
この考え方はBtoB(企業間電子商取引)のビジネス情報交換のフォーマットにまで及ぶ。ビジネスにおける情報はそれまでの仕事の手順と密接に結びついている,筆者らはオープン・スタンダードを使ってビジネス情報を交換するには,仕事の内容に対する理解と高度なプログラミング技術を併せ持ったプログラマが必要になると主張する。
1990年代末のITバブルの時代には,「ネットワークで社会が一変する」と言われていた。ところがバブル崩壊とともに威勢の良い予言をする者はどこかへ行ってしまい,最近はとんと見ない。しかし,本当の意味での社会の変化は,インフラが整いつつあるこれからなのかもしれない。
自分の仕事の未来像を思い浮かべるために,ビジネスパーソンなら読んでおいて損はない。
(日経コンピュータ 2002/06/17 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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