邦訳タイトルは『CEOを育てる』ですが、企業のあらゆる領域/階層でリーダー不足を解消するための方法が書かれた本です。
企業の生き残りにとってリーダー育成が不可欠であることを企業全体に浸透させ、次世代リーダー育成を既存リーダーのミッションとして位置づけ、包括的な仕組みを構築・導入し、一人ひとりのリーダー候補を丹念に時間を費やして育てていく、その方法/プロセスについて、既に実施しているグローバル企業の事例を提示しながら、分かりやすく解説しています。
率直な感想としては、リーダー育成を本気で考えている企業は、本気度に見合うだけの手間暇をかけて育てているんだな、というものです。
リーダーの要件定義では、教科書からそのまま引用したり、他社事例をまねたりしている企業が多い中で、自社の環境・戦略(の変化)に応じて何度も協議を繰り返しながら独自の要件を導き出しています。
またフィードバックでは、年に1度の人事評価フィードバックすらまともにできない企業/管理職が多い中で、一人のリーダー候補(1ポジションに数名)に対して複数のリーダーが協議しながら成果/プロセス/能力/性格を見極め、適性を見出し、何度もフィードバックを重ねてリーダーを育てています。
更にリーダー候補の配属においても、空きポストを待つのではなく、(企業全体の整合性は確保しつつ)育成に必要であればポストを新たに作ってでも配置し、育てています。最近は減っているとは思いますが、能力がないのに年功で昇格してしまった管理職のポストを作って組織も人材もだめにしてしまう企業とは正反対です。
まさにリーダー育成が経営戦略の主要な構成要素となっています(戦略実現の手段というよりも)。
リーダーが不足している、人が育たないと嘆いている企業は数多く見受けられますが、本書に登場する本気の企業ほどの努力をしているところはほとんどないのではないか、と思わされます。また本気でない企業には真似のできるような努力ではないと言えるでしょう。
なお、社内人材登用、徒弟制度、ゼネラルローテーションなど、日本企業が従前実施していたようなキーワードが結構でてきますが、質的には全く異なります。質的な違いを読み取ることができないと、本書のメッセージを間違って捉えることになりかねませんので、注意が必要でしょう。