冒頭の近田春夫との対談、何度も読み返した。やっぱ頭いいひと同士の対談は面白いや。菊地氏が遠慮がちで礼儀正しいとこも含めて。近田の「とにかく、日本人ってほんとの意味で言ったら、音楽そんな好きじゃないと思う」「(日本の音楽は)音楽と似たものなんだろうけど、音楽そのものじゃないような気がする」「音楽を好きってことより、応援したり非難したりするのが好き」って発言は鋭い。村上春樹の近著「意味がなければスイングはない」でも同様の指摘がされていたけど、「(J-POPは)そこで完結している特殊な符丁みたいなものだけででき上がっている」もまさにその通り。
本編の菊池成孔の楽曲批評も鋭い。「(モーニング娘。の)持つ<娯楽性>はクレージーキャッツを思い起こさせる」みたいな、アフォリズムっぽく簡潔な言葉で本質を捉えるさまは、優れた批評家の資質であり、近田春夫に通じる部分だ。「今のチャートに足りないものは『外国』」って指摘は、先の“そこで完結している特殊な符丁”って近田発言と呼応してる。昔ってもっと「外国に比べて日本は...」みたいな、外国との相対で日本を考えるみたいな視点ってあったよね。それは追いつき追い越せの劣等感だったのかもしれないけど、J-POP以降、きれいさっぱりそうした意識がなくなっちゃってるのが気になる。どっかでごまかしちゃてる気がする。
本書を通読してもうひとつ思ったのは、最初から自分の好きなものにしかたどり着けない今の世の中のシステムって、つまんねぇなってこと。あとがきの「皆さんの一番好きな音楽が、たくさんたくさん売れますように。そしてそのすぐ前かすぐ後に、皆さんが一番嫌いな音楽が並んでいますように」って言葉は、だから沁みた。
最後に、近田のプロフィールで“ビブラストーンズなどで活躍”って、そんなバンド無いですから。