公開時に周囲ではかなりの悪評が出ていたのだが、私は意外と(言っては失礼か)面白かった。もっとも悪評の「長すぎる」「映像と音響が特殊効果を使いすぎていてうるさい」「ストーリーが滅茶苦茶」「テーマを台詞でまんま語りすぎ」という指摘はまったくその通りあんたは正しいというほかないのだが、何というかカルトな怪作という感じの魅力を僕は感じてしまった。
オープニングの時代設定をナレーションと字幕で説明しCGを使いまくった未来社会の俯瞰ではじまる描写は確かに『ブレードランナー』なんだけれども、『ブレードランナー』での件のシーンには空間の奥行きがあったのでべつに意匠が新しいだけで特別な演出ではなかったように思われたのに対して『キャシャーン』(面倒なので以下カタカナで書く)ではCGの予算不足なのかべったりと平面的な画面になっていて、意匠としてはファイナルファンタジーなどのゲームの画面に似ているが、頻繁に動く細部のマニエリスティックな画面から僕はふとムルナウの『サンライズ』の都会へ行く場面の表現主義的な画面を思い出したりした。「大亜細亜帝国」の「将軍様」である大滝秀治の顔が未来都市のあちこちに映し出されるところなんかはもうそれだけで笑う。
ルナの編み上げブーツがこれまた異様にエロティックで良かったのだが、しかしストーリー全体としては異様なまでに「性」の要素が稀薄で、恋愛や性愛にまで人間関係が成熟しておらず、すべてが「家族」の周囲をぐるぐる展開しているだけなのが微妙に幼稚で徴候的に感じられた。映画自体のテーマは純粋に「戦争の悲惨さ」といった処なんだろうが、そういった徴候的な幼稚さ故、ストーリーがひたすら暴走して「みんな死ぬ!死ぬ死ぬ!」という展開になってしまうわけで、ある意味その徹底ぶりは凄い。
原作というべきなのか元ネタというべきなのかよくわからないがとにかくタツノコアニメの『キャシャーン』と映画では主要登場人物の名前が同じなだけで全然ストーリーや設定は関係なくなっていて、その中で唯一「これは『キャシャーン』だね」と納得できるのが樋口真嗣がコンテを切ったという戦闘シーンだ。ここは必見。TVアニメをそのまんま実写でやっているド迫力でゲラゲラ笑ってしまう。
しかし主人公のキャシャーンが最後までひたすら何をやっても成功しない無駄無駄無駄役立たずぶりはすさまじく、ちょっとここまではなかなかできないよなあと感心する。
傑作だとは思わないが、個人的には愛すべき作品。