かなり有名な作品なので、簡潔に書きますね。
もともとピアノを弾いていたのですが私は音大には進みませんでした。全く異なる世界に入り、ピアノ教師に習うこともやめて数年たった頃、この本を読みました。
初めて読んだときから、カノンが頭のなかでリピートされやすい状態に脳がなりました。あまりに世界が美しく完結していたため、既に廃盤になったこの作品のCDドラマを中古で購入し、何百回と聞きました。
いまも、「パッヘルベルのカノン」と言えば、楽曲よりもまずこの作品が浮かびます。また、楽曲のカノンを聞くと、この作品が心に蘇ります。
大げさに見えるかもしれませんが、これが、この作品を読んで私に起こった変化です。
カノンのメロディに載せて、タクミくんの凍った心が溶け出します。ギイや井上くんの苦悩がそこに重なり、タクミくんの心がはじけそうになり、しかしギイの愛を知るタクミくんは弾けるだけではなく、「自分」を奏でようとします。そこに葛藤や苦悩もありますが、カノンのメロディが彼を押し出すのです。そうしていつしかタクミくんは井上くんと一緒にカノンを弾き、カノンになるのです。
絶望から希望へと移り行く、少年の美しい成長をカノンの旋律とともに楽しめる、素晴らしい小説です。ああ、こんな作品をかけるなら音大に行ってみたかったなぁと思ったものでした。
最近のタクミくんシリーズはかなり変わってしまい、テンポが悪く、私はなかなか読み進めることが出来ません。
一度は捨てたピアノや音楽の楽しさを教えてくれたこの作品は、いまも大事に読んでいます。