武富智3冊目となる短編集。
前短編集の「A SCENE」「B SCENE」で魅せた瑞々しい人物描写にさらに磨きがかかり、期待を裏切らない内容となっている。
どの話でも必ずハッとさせられる表情やセリフに出会えるだろう。
それぞれの主人公が抱えるものはさまざまで、中には考え込めば身動きも取れなくなるような重いテーマもある。
しかし表情豊かな登場人物とテンポよく進むストーリー展開で、時に涙を、時に笑いを誘いながら話は進む。
そうして読み終えた後には、爽やかさと温かさが胸に残る。
人生におけるどうしても埋められない喪失や、捨てきれない想い。
それらとどうやって向き合い、歩んでいくのか。
上から目線でもなく、説教臭くもなく、ただ伝わってくるものがこの作品にはある。
基本的にそれぞれの短編に直接のつながりはないので、この「C SCENE」だけ読んでも大丈夫だが、
最後の書き下ろし短編だけは「A SCENE」「B SCENE」を読了後に読むことを強くオススメする。
(そして作者渾身の長編「EVIL HEART」もぜひ!)