音楽の内容は、もちろんオーガニック、アコースティックなキューバ音楽です。
映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』に取り上げられたことから、オマーラもキューバ音楽通のなかで知られている人という次元を超えて、有名人になりました。もちろんぼくも映画で彼女の存在を知ったひとりです。映画に流れる音楽そのままのイメージの音楽、時代的には1950年代ぐらいまでに作られたような楽曲がこの作品でも聴けます。
オマーラのヴォーカルはとてもムードとグルーヴのあるものです。でも、ひとりよがりな熱唱ではありません。あくまでブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブを支えるとともに、彼らに支えられているヴォーカルです。そういう意味では、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プレゼンツ・オマーラ』というタイトルに偽りありませんし、ヴォーカルに興味があるほうのリスナーにも、インストに興味のあるほうのリスナーにも満足できる歌唱と演奏とになっています。
そして、何よりもすばらしいのは、電子的な打ち込みの音の助け・誇張など一切借りずに、人間の力と楽器でヴォーカルも演奏も躍動していることでしょう。21世紀の音楽は、コンピュータによる音作りのなかで、ヴォーカルや演奏から人間の躍動がますます失われていっています。でも、この作品は、20世紀最後の年に制作・録音されただけのことはあって、なおも人間の躍動を伝えてくれる作品のひとつです。そういう意味で、聴いていると、心が洗われる作品です。
さて、輸入盤と同じ体裁のブックレットには、原歌詞と英語訳つき。それに、日本語歌詞、解説、楽曲解説の載った日本盤リーフレットがついています。