School Food Punishment通称スクパニとの今回のコラボ新譜は、これまでの
坂本真綾像をさらに一歩前へと前進させた、とにかく洗練されたチャレンジフルな
勢いを感じる。スクパニ自体も最近、第二ステージと呼べる新たな第一歩を
踏み出したばかり。このタイミングでの両者のコラボは、より進化したポップさを
今現在、自身の中に取り込もうとしている坂本真綾としても、そしてより、
シンプルにストレートに一つの芯をその音楽的自我の中に獲得しようとしている
SFPとしても、まさに出合うべくして出合ったものと言えるのかもしれない。
イントロの第一声からして気合の入れようが違う―それでいて肩の力の抜けた
等身大の心地よい気概が伝わってくる。それは過去、同様にアップテンポな
「ヘミソフィア」や「トライアングラー」と自身を削りながらどうにか格闘し、
奮闘していた彼女とは明らかに異なる空気を感じるのは気のせいだろうか。
美しく響き渡るビビッドな歌声が未来的な楽曲アレンジと平行して疾駆する。
一つの境界線を越え、どこか余裕さえ感じられる「今」という時空に存在する
彼女は何もかもから解き放たれて、どこまでも自由に翔んでいく。
対するc/wの「Something little」は「Buddy」とは対照的な、恋愛中の二人の
日常を切り取ったスローナンバー。どこか外国の恋愛映画のような歌詞は、何の
飾り気のない彼女自身の中から出てきた、身の丈に合ったさりげなさが心地よい。
それでも「Buddy」の鮮烈さがあまりに突出して感じられるため、欲を言えば、
できればもう一曲c/wの方も、引き続きSFPに手掛けて欲しかった気もする。
折角CD帯にて「衝撃のコラボ」と銘打っているだけに、それくらいの配慮を
望んでもよいのでは? ――今一つの恋愛を成就させた彼女自身が紡ぐのは、
"Buddy(相棒)"という、ただ一つの真実。それが迷いのない、まっさらな
歌詞に感じられ、何て綺麗な翼を持っているんだろうと改めて目を見張る。
そして初回限定盤にのみ収録の全9曲という贅沢な最新Live音源にも、
「歌が上手くなったな」と素直に感動させられた。年頭リリース最新アルバム
『You can't catch me』中心の構成。冒頭の躍動的な「eternal return」といい、
後半の「キミノセイ」といい歌声に輝きと力強さが加わった。それでいて微妙な
ミドルナンバーの抑揚をおさえた「秘密」の表現力、歌唱力という意味では
なく、彼女自身の自然体な歌声の魅力をあますところなく披露することに
躊躇がなくなってきたゆえんだろうか。その自由さが堪能できる「DOWN TOWN」
そして「スピカ」や「ボクらの歴史」などの過去作も"聴かせる"力をもって
存分に魅了する。文字通り「腹が据わってきた」というのか、決して息切れする
ことない自身の中心核が確実に育ってきている。それだけに「みずうみ」や
「ムーンライト」などのスローバラードには何とも言えない聴き応えが...
ただ難を言えば、様々な作家陣に依頼することで、確実に坂本真綾自身の
色合いがぼやけていっていることだろうか。つまり、スクパニならスクパニ
それそのものになっていき、そのあまりの柔軟性の器用さにかえって一抹の
不安を覚える。とはいえ彼女自身の世界は確実に拡がり、それだけ世界そのものに
染まってしまいながら、どこかでそれをよしとする自身のしたたかさも如実に感じる。
Live音源の後編も間もなく発売される新譜第二弾「おかえりなさい」
にて収録。そして来月頭リリースのミニアルバムと駆け足で、新たに
駆け続けていく坂本真綾の世界を堪能させてくれることだろう。