1970年発表のセカンド・アルバムは、ファースト・アルバム「Five Leaves Left」のセールス不振に打ちのめされつつも、その才能に信頼をおいていたプロデューサー、Joe Boydに励まされながら、期待を込めて間もなく発表された作品です。なにかちょっと嫌なことがあったけれど気分を変えようとでもいうように、ファースト・アルバムの雰囲気からやや舵を切り直されたようにも感じられます。一般的には、全体に少しポップで、ジャジーなアレンジが施された楽曲が収められており、他のアルバムと比べていくらか装飾気味の作品として、また、「Fly」や「Northern Sky」にはThe Velvet UndergroundのJohn Caleが自ら積極的に関わっていることなどからも、他の作品とは一線を画した印象のものとして受け取られているようです。その反面、最初と最後にインスト楽曲と、さらにもう1曲のインストが収められ、Nick Drakeの歌声や歌詞を聴きたいという点では、いくらか物足りなく、あるいは地味にすら感じられる可能性のある作品かも知れません。
しかし実際は、他の2枚に十分比肩する(どころか、Nick Drakeの全ての作品に携わったエンジニアのJohn Woodは自分の経歴の中でも最も完璧なアルバムだといっています)素晴らしい内容で、特にNick Drakeの代表曲としても際立った楽曲「Fly」「Poor Boy」「Northern Sky」などが収められています。中でも「Northern Sky」については、ラジオのドキュメンタリー番組上で、彼の全作品の中で“最も美しい曲”として紹介されています。また、よく耳を傾ければ、3曲を占めるインストもNick Drakeの特徴的な音楽性をよりはっきりとした形で伝えているのがわかります。
この後、サード・アルバムの制作に臨んで、Nick Drakeは再び作品の方向性に舵を切ることになりますが、かつてNickの才能を見いだしたJoe Boydはその最後の作品(「Pink Moon」)について、自分にはあまりに荒涼とした作品に感じられる、というような感想をこぼしています(ごく近い立場から全てを見つめていたということも理由だと思われます)。その荒涼としたラスト・アルバムの内奥から伝わってくる特別なきらめきとは別に、セカンド「Bryter Layter」の素晴らしさは、一般的な基準からいえばそれでもまだずっと素朴でささやかな響きではありますが、しかし確かに聴こえてくる希望をたたえたその伸びやかさだと思います。Nick Drakeの大抵の曲からは、Nickのうつむいた姿が浮かぶようですが、「Northern Sky」では上を眺め、先を見つめているNickの姿が窺えます。歌詞“Brighten my northern sky”というのは大ざっぱに、“ぼくの空の中心(北天)を明るくしておくれ”ということ。この曲ひとつをとっても傑作ですが、他の2枚とはまた別の意味で、本当に素晴らしいアルバムです。