ニュー・オーダーがファクトリーレコードに残した5枚のオリジナルアルバムのうち4枚目にあたる今作。2枚組で1枚目はリマスターされていて、二枚目はシングルに収録の音源を集めたものだが、中にはアナログ音源をデジタル処理したトラックも含まれていて、海外のファンサイト等ではかなり問題になっている。
アルバム自体はメンバーも語っている通り前作『ロウライフ』のポップな音作りに体する反動で、かなりラフでパンクっぽい内容になっている。フッキーのベースはいつになくリラックスした様子でメロディアスなのに対し、バーニーのギターはフラストレーションをそのまま音に昇華したような、現代音楽スレスレの不協和音に満ちたノイジーな響きを聴かせる。なんというか「ヤケクソ」というか "desperate" というか。でもそれがカッコいい。87年までの12インチ音源をコンパイルした『サブスタンス』がNOの「構築美」の結晶だとしたら、こちらはNOの「破壊美」をとことん堪能できるというか。パンクにルーツを持つUKのニューウェイヴバンド、としてのNOを最も体現した作品だと思う。
リマスターは、うん、すごい。今回のリマスター再発で一番音が変化したのがこのアルバムだと思うし、それがいい方向に作用したと思う。1曲目・2曲目はほとんど元盤と変わらないのだが、3曲目のイントロのアコギの爪弾きで「あっ違う」と思って。一番違うと思ったのは7曲目・8曲目あたりの、ボーカルのない即興的なインストのパートの持つ、音の塊としての迫力が元の盤と全然違う。9曲目のラスト1分あたりの天にも昇るかのような展開も音の厚みが増したことでぐあーっとこっちを引き込む力が増していて…代表曲中の代表曲 "Bizarre Love Triangle" も、これまでこのアルバムバージョンはShep PettiboneやStephen Hagueによるリミックスと較べて地味な印象があったのだが、初めて「これはいいわ〜」と思った。これもラスト一分くらい、ボーカルなしで同じコード進行をずっと繰り返すパートが…、すごく気持ちいい。元の盤とも『シングルズ』収録の音源とも全然音像が違う。これはNOファンを自認する人なら是非聴いてもらいたい。
さて2枚目のボーナスディスクだが…全体的に音が良くない。特に「1963」と「Touched By…」は哀しくなるくらいに。ただ、"Evil Dust" "True Faith-True Dub(と表記されているが、実際にはEschreamer Mixらしい)""Beach Buggy(これも実際には"Blue Monday 1988 Dub")の3曲は、すごいレア度の高い音源で。出来不出来、好き嫌いを越えた部分でこれらの音源を収録してくれたのは特筆に値する。これで『International』と被ってる1・4曲目の代わりに"Touched By The Hand Of Dub"とビザラヴの7inch Remixを収録してくれてたら…残念。
これは買って良かったと素直に思う。他の作品についてはリマスターの出来について必ずしもディフィニティブだと思わなかったのだが、これに関しては大正解だと思う。ライナーノーツでStephenがファクトリーの主要スタッフであるアラン・エラスムスについて語っていたコメントも面白かったし(「ファクトリー・ジンバブエ」なんて知らなかったよ…)。