Cook得意の現在と過去を絡み合わせての、ミステリー作品である。最後の10ページあたりまで読み進めるとさすがにどのミステリーもネタがばれているものだが、この作品にはそれがない。見事なプロットである。
物語は主人公が高校生の時に起こった事件を中心に展開する。高校生の恋愛話に、黒人差別の話が混ざりながら広がっていく。主人公は中年になっている今でもその事件の影響を強く受けている。住まいも30年前と同じ町である。つまり場所も時間においても、現在と過去が分けることが出来ないぐらいにシンクロしているのだ。これをCookは、その文体でも見事に表現している。現在のことを書いているのか、過去のことを書いているのか、読んでいて分からなくなったことがしばしばあった。まさにこの過去と現在の「絡み合い」がこの作品の魅力である。(ただし英語で読むとこの絡み合いを「読みほどく」作業が難所だと言える。)
結末を読み終わった後、静かな驚きを感じながら、良質のミステリーを読んだという感じが強烈に襲ってくる。「読みほどく」のに手間取ることがある点で一つ星を減らしたものの、Cookの才能には感心させられた。強くお勧めする一冊である。
なお、英語は平易な方だが、Sheldonほどには簡単ではない。辞書を時々引きながら読むといった感じである。