ケン・ラッセルが大好きで何作かレビューを書いてきた中で、まともな精神の人にはとても観れない映画ばかり撮ってる監督のように紹介してしまいましたが、今回はチョット反省(?)ぎみに、とてもステキな映画を一本。
それが本作「ボーイフレンド」なのです。
ロンドン、そしてブロードウェイで50年代にロングラン・大ヒットしたミュージカルの映画化。そして本作で主役を演じるのは、'60sイコンのひとり、元モデルのツイッギー!
1920年代、イギリスの港町ポーツマス。旅回りのさえない一座が舞台「ボーイフレンド」の公演を準備中。ところが主演女優がケガをしてしまい、何と・・・舞台監督助手のポリー(ツイッギー)がその代役に!? 無理矢理舞台に上げられたポリーは、けなげに代役を務めようと悪戦苦闘。
するとそこになぜか、ハリウッドの巨匠監督デ・スリルが観劇に。それを知った劇団の面々は、我こそはと舞台からモーレツアピール。過剰な演技合戦をよそに、ポリーは密かに想いを寄せる花形役者のトニー(クリストファー・ゲイブル)との恋を妄想中。はてさて、一体どんな顛末に!?
ケン・ラッセルは本作の企画を思い立った時、もともと知り合いだったツイッギーに主役をオファー。演技も歌も踊りも経験がなかったツイッギーは、ラッセルの熱烈なアタックに重い腰をあげ、猛レッスンで「映画初出演」に挑んだといいます。しかし、この「ボーイフレンド」を見ると、とても初めての演技とは思えない。メガネをかけた、さえない演出助手から一転して舞台の上で輝くヒロインに変身していく役を、実にイキイキと演じていて、「ステキ〜!」としかいいようがありません。
セシル・B・デミルを露骨にパロッたようなデ・スリルというキャラクターもケッサクですが、そのデ・スリルにアピールしようと展開する過激な爆笑タップダンス合戦とか、ポリーの妄想シーンにどんだけお金&手間かけてんだよ!と言いたくなるくらい気合入りっ放しのケン・ラッセル演出には頭が下がります。
本作は「劇中劇」的な二重構造を持った作品ですが、ミュージカルのシーンがとにかくゴージャス。これでもか、これでもかとポップな演出のオンパレード。監督夫人のシャーリー・ラッセルのいつもながらのアートセンス抜群の衣装。「メリー・ポピンズ」で知られるトニー・ウォルトンも美術監修に加わるなどして、'20年代アールデコ調とポップアートが融合。
元々ケン・ラッセルはカメラワークや役者の動かし方には傑出した才能を持つ監督なので、いつもはアングラ・エログロ方向のベクトルを真逆の「陽」の方向に向けた事で、とてつもなくオシャレ・ポップ&ハッピーなコメディーミュージカルになった訳です。
さて、実は本作、かつて国内でビデオソフトで発売されていたものは、アメリカ公開用に20分以上もカットされた短縮版(これは上映回数を増やすためにという、いかにも米国な発想)だったのですが、日本でも'95年に137分の「完全版」が公開されました。これもひとえに「シブヤ系」ブームのおかげです。
ただ、喜び勇んで観に行った筆者は、意外、というか不覚にも「あれ・・・こんなにタルい映画だったっけ?」と思ってしまった(泣)。実は皮肉な事に短縮版の方がテンポが良く、映画のコミカルさを楽しめるのです・・・。カットされているせいで、ところによって説明不足や、辻褄が合っていないように思われる難点、はあるのですが。
何年か前に友人にケン・ラッセル映画を紹介しまくったら「面白い面白い」と喜んでくれて、「ボーイフレンド完全版」(確かWOWWOWで放送したもの)を貸したところ「タルくてイマイチだった・・・」と言われてしまい、やっぱり短縮版にしておけば良かった、と思ったものでした。バージョン違いでこんなに印象が変わってしまう映画も珍しいのですが。
ケン・ラッセル映画の多くは内容が過激なため、今の時代ではDVD化はムリでしょう・・・という良識的なファンもいるようですが、「いやいや、映画なんだから多少の事はいいんじゃない?」と思いつつも、でも、この作品「ボーイフレンド」なら全く問題なし!というかこんなにキュートでハッピーな映画をなぜいまだにDVD化しないの!?と不思議なくらいです。
かつて'80年代のころ、'60sの文化というのは古い、忘れ去られて誰も注目していないものだったのですが、'90年代にシブヤ系といった音楽を中心に再評価され、今ではファッションのスタイルにも不可欠な要素になっています。
「ガーリー」目線で観ても楽しめる(というか、その目線こそ正解なのかもしれません)だけでなく、発見満載!の「ボーイフレンド」は、マスト・DVD化。
もちろん、完全版と短縮版の2枚組で!