登録情報
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| 1. Thunder Road |
| 2. Tenth Avenue Freeze-Out |
| 3. Night |
| 4. Backstreets |
| 5. Born to Run |
| 6. She's The One |
| 7. Meeting Across The River |
| 8. Jungleland |
特に本作の聞き所であるツインキーボードとサックスを軸とした高揚感のあるサウンドは、現代のロックに全く影響を与えていない。冷静に考えれば、現代に連なるUSロックの系譜から孤立した“進化の袋小路”ともいえる作品である。
一方、オービソンの震えるような唱法を力ずくで継承してしまう狂信ぶりや、スペクター譲りの分厚いサウンドを触媒に、有り余るパワーを臨界点まで持っていく楽曲展開を見ていると、前世代の音楽とは強く結びついていることが分かる。
ロック史の中でのスプリングスティーンの位置づけは、「開拓者」ではなく「総括者」ということになるのだろう。
しかし、仮にそうだったとしても、かつてロバート・スミスが「ボウイなんて『ロウ』を出した後に死んでしまえばよかったんだ」と言ったように「スプリングスティーンなんて『明日なき暴走』の後に死んでしまえばよかったんだ」とは思わない。
法廷闘争や離婚で苦しんだり、米国の代弁者に祭り上げられたり、バンドと決別したりくっついたりしながら、不格好に歩き続ける姿に共感を覚える。
スプリングスティーンはロッカーではなく、スプリングスティーンである。そして本作は、その唯一無二の“立ち位置”を確保していく眩しすぎるほどのスタートラインなのである。
高校生当時、購入してから1年くらいは朝から晩まで
このアルバムを聴いて、その中で暮らしていたような覚えがある。
新宿区大久保3丁目(明示通り沿い)で暮らすティーンエイジャーには
このアルバムで歌われていることすべてが真実であり日々のBGMであり、
また信じることができる某かの光であった。
もっと言うなら、この時期の自分のサントラ盤であったとも言える。
とにかく、このアルバムこそが吉里爽が隅から隅まで英語の歌詞を覚えた、
最初の洋楽アルバムではなかったか。
そして、このアルバムから立ちのぼるロックンロールと言う名の魔法が、
いや麻薬が吉里爽の魂を蹂躙し、解放し、宇宙の果てまでぶっ飛ばし、
挙げ句の果てには‘ Born to Run(生まれついてのかっ飛び)’という
タトゥーを心の奥底に刻んだのだった。
1曲目の♪Thunder Road で「勝つために敗残者たちの街を出る」と勇んだ
少年は2曲目の♪Tenth Avenue Freeze-Out で10番街へと繰り出し、
3曲目の♪Night の中で夜の精に心を解放し、4曲目の♪Backstreetsでは
挫折の涙を流す。
(LPでは、ここまでがA面だ。)
5曲目の♪Born to Run では生きる喜びを享受することへの祈りと賛歌が
情熱的に歌われ、6曲目のShe's The One(彼女でなけりゃ)では恋の熱情が
ジャングルビートに乗せて解き放たれる。
7曲目の♪Meeting Across The River で川向こうで起こるはずの秘め事に
心ときめかせた主人公は、ラストナンバーの♪Jungleland で種々雑多な
人々が蠢く大都会で自らの居場所を探しあぐねて途方に暮れてしまう。
捨て曲は1曲もなく、すべての曲が有機的に絡み合い引き立て合い
補完し合う、濃密なコンセプトアルバムである。
音楽的には、スプリングスティーンが青春時代に吸収してきた50年代の
ロックンロール、ロカビリー、60年代のブリティッシュ・インヴェンション、
スタックス、モータウンなどのソウル、R&B などが充分に咀嚼され、
親しみやすいメロディと絶妙なアレンジメントとして結晶化している。
アーティスト生命の何分の一かを注ぎ込んだと思わせるほどの労作であり、
過不足ない演出とキャスティングで仕上がった1編の上質な映画のように、
いつまでもそして今でも胸に残る傑作だ。
人生でもっとも多感な時期にこのアルバムと出会えたことの幸せを
しみじみと噛みしめたい。
ロックが好きなら、ロックンロールを語るなら、マスト・バイ!である。
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