それを知ったうえで読むと、武蔵の『五輪書』には平時に生きざるを得なかった有能な荒武者の、屈折に満ちた自己述懐という一面が感じられる。否定命令文で占められた過剰に禁欲的な「独行道」の文体や極度に倫理的な内容に、たとえば西欧の騎士道に見られる明るく開放的なダンディズムとは無縁な、暗い境遇の不幸を感じるのだ。武蔵の武芸者としての真骨頂が「実戦」にあり、端的に言って「戦場における公明正大な人殺し」にあったのだとすれば、彼の絵や彫刻は本来の才能の屈折した表現なのかもしれず、だとすれば『五輪書』が、敗戦を経験し戦後の高度成長を支えた企業人たちの間で、主にビジネス書として読まれてきた消息も合点がいくのである。
とはいえ、以上は単なる内向きの述懐にすぎないこともまた事実だ。日本の文物が、外からの新規なまなざしによって新たな息吹を獲得するのはよくあることで、近くは寺山修司の「天井桟敷」に代表される前衛演劇や、「山海塾」などのいわゆる舞踏がそうだった。その意味で、本書のもつ価値は出版後の外の評価によってこそ明かになるのかもしれない(今野哲男) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
世界中の武道関係者はもとより、経営者、ビジネスマンたちが、武蔵の書を読み、勝ち抜くための哲学、創造性の秘密、そして人生の極意を学び、多大の影響を受けてきました。本書はそうした世界の読者待望の決定版『五輪書』です。
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英訳は非常に明晰で読み易いです。内容はほぼ同じなのに読後感が原書とは違うのが不思議です。少し不満を言わせてもらうと、それは原文の漢字の振り仮名が少ない事です。そのため原文だけの鑑賞が多少しづらくなっています。
欠点が少しあるものの、英訳も読めると言う特色は評価すべきもの。そしてウィルソン氏のまえがきと序文は読み応えがあります。本書は日本に関心のある外国人の方や英語学習者にお勧めです。
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