西海岸の代表的ラッパー・プロデューサーの一人であるDJ Quikが放つ6年振りの新作。この人の武器はトラック創りの
巧さ。聴き手の耳に美味しい潤いあるループ・トラックは言語の障害等飛び越えて何度も聴きたくなる磁力があり、彼自
身その才能を活かし、同胞のラッパー名義の作品に留まらずTony! Toni! ToneからWhitney HoustonまでR&B畑の著名
アーティストのプロデュースに携わり多数の名曲を生んでいる。
本作は、彼自身の名に由来したタイトル題が示す様に何処か自叙伝的かつ内省的な雰囲気が漂う。何処かメランコリー
な色を湛えた濃厚なトラック群と、多彩な歌い手・ラッパーのゲスト参加により聴き応えのある作品に仕上がっている。
R&BシンガーJon B.を迎えた先行シングル「Real Woman」、太いビートに乗せ繰り返されるメランコリックなキーボード、
Jon B.の柔らかな多重コーラス等を丁寧に重ねたトラックに、Quik自身のライムが良く映える。何処かくぐもったシンセサ
イザの湿ったコードと跳ねる乾いたビートとの対比が病みつきになるパーティ・チューン「Luv of My Life」。ホーンっぽい
音とピアノの創るグルーヴ感、そこへ突如挟みこまれる爆発音の様な仕掛けが楽しい「Killer Dope」、Dweleの囁く様な
歌声と、他曲よりトーンを穏やか目にし語りかけるQuikのライムが官能的なバラード「Time Stands Still」…1時間以上の
尺にも関わらず、耳にとろける余りに美しい楽曲の数々はその都度リピートしてしまう中毒性がある。
キャッチーな歌フレーズの頻繁な挿入等、普段ラップを聴き込んでいない層も取り込める聴き易さがある為、多くの人に
聴いて頂きたい。Quikが組み立てた緻密なトラックを聴くだけでも価値がある作品だ。