ジャケットの絵のように奇妙なバランスでまとまった
本当に美しく素晴らしいアルバムだ。
彼やフリート・フォクシーズのようなバンドが、フォークミュージックを基調にしながらも
現代的な感覚でアップデートしたような音楽を鳴らしてるが、
このアルバムは、その一連のアルバム群の中でも独特な輝きを放っている。
もし、レディオヘッドがフォークミュージックを演奏するバンドだったら
このようなアルバムを作ったかもしれない。
音の質感や、豊かなサウンドアイデア、複雑でダイナミックな楽曲の構成など、本当にお見事。
そのアイデアも、ただ面白いサウンドというだけでなく、ちゃんと一曲の中で効果的に溶け込んでいて
冒頭にも書いた通り、奇妙なバランスで美しくまとまっている。
エモーショナルなギターフレーズに、夢の中から洩れ響いているようなコーラスと
マーチングドラム風のスネアロールが重ねられる「Perth 」
中盤、ドラムがフルセットで入ってくると、サックスが鳴り響いて美しく混沌としたサウンドに変わる
このオープニングナンバーから続くのは「Minnesota,WI 」。
アコースティックギターのアルペジオを、シンセのシークエンスのようにひたすら反復させたり
(それによって、弦を弾く指の音が泡のようなリズム・ノイズに聴こえる!)
雷鳴のようなディストーションで歪んだベースが入ってきたりして、本当にアイデア豊かで飽きさせない。
個人的には、古ぼけた夢のような音色のシンセと、美しいヴォーカルラインで始まる
「Calgary 」が大好きで、この曲以外にも言える事だけれど、音の鳴る所、鳴らない所のバランスが
本当に的確。
それによって、曲がダイナミックになったり繊細になったり
一曲の中での感情の動きを、より緻密に引き出していて素晴らしい。
その「Calgary 」から続く「Lisbon, OH」
この、ブライアン・イーノのアンビエント諸作を思わせる美しいインストから
まるで80年代ハリウッド映画のエンディング・ロールで流れているような
ムーディーなバラードのラスト・トラック、「Beth/Rest」へと繋がるのを聴いていると
雪が解け始めた春の近づく山とか、まだうす暗い明け方の空気を想像して、少しだけいい気分になる。
それは、また一から始まる不安と希望がまぜこぜになった、祈るような静かな感情だ。
最後にもう一つ。
フォーク・ミュージックの素晴らしい所は、そのシンプルさゆえに、ダイナミックで美しい
メロディーの動きにあると思うのだけれど
ボン・イヴェールのボ−カル・メロディーもシンプルで美しい。
トラックのアイデア豊かで緻密な構成と対比してみると面白い。
シンプルで複雑、繊細でダイナミック。
相反する2つが同居しているこのバランスが
アルバムをとても興味深く、素晴らしいものにしている。