CDジャケットのブロッサム・ディアリーは、美貌の学校の先生という雰囲気を漂わせていますが、その歌唱振りは女性特有の魅力を倍化しており、その外見とのギャップの大きさと珍しいキュートな声質に惹きこまれました。1956年9月の収録ですから、半世紀前の録音ということになりますが、今でもその不思議な歌唱の魅力は健在です。
彼女は、ピアノを演奏しながら歌唱するという所謂弾き語りですが、ピアノもヴォーカルも安定していて聞き惚れしました。5曲目の「モア・ザン・ユー・ノウ」は、歌なしの演奏ですが、見事なバラード・プレイですし、とてもリリカルなピアノでした。ベースがレイ・ブラウンですので、そのサポート振りも見事です。
6曲目の「ザウ・スウェル」、7曲目の「春の如く」と続くところが最高です。この有名なスタンダード・ナンバーを、鼻にかかったようなスウィート・ヴォイスで軽やかに華やかに歌いまわしています。スウィングする楽しみをリスナーに届けてくれました。
特に、オスカー・ハマースタイン2世の代表曲のひとつ「春の如く」をステキなフランス語で歌っています。けだるい雰囲気が漂い、小粋であり官能的でも歌い方がいいですね。このアルバムが半世紀もの長い間、聴き継がれる理由を感じ取りました。
ブロッサム・ディアリーは、1952年にパリに渡り、クラブで歌ったり、ザ・ブルースターズというモダンなコーラス・グループで活躍したりしています。父親はスコットランド人の血をひいており、母親はノルウェー人、結婚相手のフルート奏者ボビー・ジャスパーはベルギー生まれという係累と環境が、ヨーロッパの魅力をたたえたアメリカのジャズ・ヴォーカリストという特異なポジションを占めたのだと思います。