ビートルズのジョン・レノン=ポール・マッカートニーによる曲は有名どころから末端まで必修科目のようにカバーされていました。その中から60年代半ばから70年代にかけての黒人によるカバーに焦点をあてた企画が、このUKの懐メロレーベル、エースの編集盤です。
レイ・チャールズ(エレノア・リグビー/イエスタデイ)、スティーヴィー・ワンダー(恋をだきしめよう)、ウィルソン・ピケット(ヘイ・ジュード)、エスター・フィリップス(アンド・アイ・ラブ・ヒム)といった人たちによる名演は、ライナーノーツに記載されているものの収録されていません。したがってあまり知られていないカバー曲が中心となりますが、これらはモータウンやフィラデルフィアやニューヨークの洗練されたものからメンフィスやマッスル・ショールズの南部ソウルまで、60年代から70年代にかけてソウル・R&Bが面白かった時代の味付けが施されています。個人的にはウィー・ウィリー・ウォーカーやアル・グリーンのメンフィス・ソウル、ジュニア・パーカーやロウエル・フルソンのブルースに興味をそそられたり、初めて聞いた時にオリジナルよりかっこいいと入れこんだオーティス・レディングの曲(デイ・トリッパー)の別テイクに喜んだりと、ソウル・R&Bファンの好みによっていろいろな顔を見せるアルバムであると同時に、ビートルズはよく聞いていてもこの手のジャンルに縁が遠かった人たちへのソウル・R&B入門になりうる内容です。