2011年、Steve Hackettの23枚目のオリジナル・ソロアルバム。メンバーはライブバンドでもあるRoger King(kb)、Amanda Lehmann(g, vo)、Nick Beggs(b, stick)、Gary O'Toole(ds, vo)、Rob Townsend(sax)に、ゲスト的にDick Driver(b)、Simon Phillips (ds)、Chris Squire(b)、John Hackett(f)などが参加。
Steve Hackettは他レビューでも言われている通り、好きな人には本当にハズレのないアーティストである。曲のヴァリエーションは多彩で、プログレはもちろん、ハードでヘビーなブルース、フォーク、クラシック、フラメンコ、インド、中近東などのワールドミュージックフレイバーなものまで、変幻自在である。そのなかにもジェネシス風のアレンジも忍ばせ、昔からのファンにサービスしてくれる。
ダークで重苦しく、悪魔的で、荘重で厳粛な、疾走感のある激しい曲がある反面、甘く切なくメランコリーで繊細、憂鬱で不安な影を持つ平穏さ、美しさが胸に染み入る曲もあり、本当にどっぷりとHackettワールドに酔いしれることができる。ハードでアグレッシブなエレキギターと眩暈がするほど美しくロマンティックなクラシックギターの対比は、他のアーティストではそう聴くことはできない。よく幻想的とか叙情的といわれているようだが、自分としてはあまりそうは感じず、何かを探し続けている感じ、あるいは遠くを見つめているがしっかりとその何かを見据えている感じに聴こえる。自信に満ち溢れ曲を作り出していると感じる。
前作「Out of the Tunnel's Mouth」から参加しているChris Squireもグアラングアランと響いてくるベースがHackettの得意なハードでヘビーなブルースによくマッチしており、いつまでも聴いていたいと思えるほどカッコイイ。この版ではボーナスでDisc 2がついており、おおむね再録であるが、やはりその曲の多彩さが飽きさせない。その中で個人的には「Wild Orchids」収録のReconditioned Nightmareが好きなのだが、もともとは「Cured」のThe Air-Conditioned Nightmareで、自分が初めてHackettに接した曲である。あの衝撃からもう30年もたつのだが、そのころとほとんど変わらないハイクオリティなアルバムを出し続けているHackettに拍手!