希代のカリスマ指揮者、レナード・バーンスタインのCBS音源から、交響曲に絞って編纂した超弩級ボックスセット。アナログLPサイズの化粧箱は外箱が被せ式で、内箱は菓子の詰め合わせ風の仕切り付き。アナログレコードを処分してしまった、あるいは所有歴の無い方には邪魔者扱いされそうな大きさだが、どうか勘弁してあげて欲しい。これはアメリカ国民に愛された指揮者への、彼らの想いの丈を表す装丁なのだと思う。60枚のCDにはすべて異なる紙製ジャケットが与えられ、32ページのブックレットともども、粋でチャーミングな指揮者の写真で飾られる。
収録年は50年代と70年代を含むものの、全体のほぼ8割は1960年代。その時期を代表する音源はほぼ網羅しており、マーラーは既発のCBS版全集から「大地の歌」を外した残りの楽曲をすべて収容。チャイコフスキーは(バーンスタインが嫌悪したという)「マンフレッド」以外のすべてを収容。シベリウスも「クレルヴォ」を除く全曲、ベートーヴェンも欠落無し。もちろん自作の三曲もすべて揃える。
いっぽう、それ以外の作曲家はほとんど全集録音がなされていない。これは指揮者である以前に、まず音楽家たろうとしたバーンスタインならではと思う。
演奏は一部を除き、すべてNYPとのコンビで、どの楽曲も雄弁かつ濃厚。といっても、手元の重複分と合わせた20枚ほどを聴いての感想だが、そのすべてにバーンスタインの美学が詰まっている。一部、曲によってはかなり個性的な解釈が目立つものの、半世紀以前の演奏にありがちな違和感はまったく無い。「普遍性のある個性」とは矛盾をはらんだ言い方だが、これはバーンスタインが「それ以降」の音楽に与えた影響の大きさゆえだろう。
それにしても、一人の指揮者が二十余年(実質的にはほぼ十年)の間に、これだけの交響曲録音をこなしたという事実。バーンスタインのエネルギーもさることながら、それを支えたのは「お金を湯水のように消費して」芸術の大衆化を進めた、真に豊かな時代のアメリカである。半世紀を経た今もなお、その幻影が強い説得力を持つことを、カリスマ不在の時代に生きる私たちは、はたしてどう捉えるべきだろうか。