レスピーギ組曲「シバの女王、ベルキス」と「変容」(管弦楽のための主題と変奏曲)を収録。サイモン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で1985年の録音。
オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi 1879 - 1963)の作品というと、ローマ3部作がめちゃくちゃ有名で、それに次いでリュートの為の古風な舞曲とアリアがある。しかし、それ以外の作品となるとそれほど知られてはいない。ただし、日本では、「シバの女王、ベルキス」が木村吉宏の編曲によりブラスバンド曲の定番として広まったため、聴き手の音楽への係わり方によって、「代表曲」が異なるという現象が起きている。「シバの女王、ベルキス」の存在価値を一般的に高めた録音としては、このシャンドス・レーベルによるサイモンの録音をまず指折らねばならない。
「シバの女王、ベルキス」は紀元前1,000年のイスラエルとその周辺を舞台としたバレエである。彩色を極めた舞台効果と、レスピーギのエキゾチックな雰囲気に満ちた音楽で華々しい成功を飾っている。レスピーギという作曲家は学究肌のあった人で、グレゴリア音楽を研究して「グレゴリアン協奏曲」を書いたり、ロッシーニやラフマニノフの曲を管弦楽組曲として再編したりと多様な音楽活動を行っているが、この「シバの女王、ベルキス」はアラビア音楽(主としてトルコ音楽)の積極的な取り入れが顕著である。組曲は1.ソロモンの夢 2.夜明けのベルキスの踊り 3.戦いの踊り 4.狂宴の踊りの4部からなる。サイモン版は2.と3.の順番を入れ替えており、エスニックなパワーの続く楽曲が冒頭から続く。第1曲の導入部はことさら印象的で、チェロ→ストリングスと雰囲気に満ちたモチーフの提示に続いて、壮大壮麗な全管弦楽による合奏となる。このシーンはリムスキー・コルサコフの「シェエラザード」を髣髴とさせる。第2曲にあたる「戦いの踊り」は私たちが漠然と思い描くアラビア音楽の雰囲気に近く、土俗的なパワーが良く出ている。
レスピーギのオーケストレーションの素晴らしさが圧巻である。サイモンの演奏は求心力確かでウェルバランスな演奏と言えるだろう。「シバの女王、ベルキス」の録音では、最近ではアシュケナージとオランダ放送フィルによる録音効果満点の鮮烈なものもあるが、2曲目と3曲目の曲順の入れ替えで随分雰囲気が異なるのも面白い。「夜明けのベルキスの踊り」は官能的とも言える叙情的な音楽なので、これがどこに来るかが大きな印象の相違となる。
いずれにしても、当盤は併録の「変容」と合わせて、いまひとつ知られていないレスピーギの作品を知る良質良演盤である。