ニューヨークのニューミュージアムを訪れた際に見かけたのでアマゾン.comで購入して読んでみました。
内容的には貴重な海外から見た視点で日本の90年代以降の現代美術の状況が書かれています。
私は翻訳家ほど英語の細かいニュアンスまでは取れませんが、読んだ印象としては割と日本の現代美術にクリティカルで辛らつな意見を述べています。(ほとんどほめていたような記憶がない)
本来こういった仕事は日本人の研究者がしてもよさそうな仕事なのですが、著者はイギリス生まれでUCLAでも教えたことがあるそうです。本書は個々の日本の芸術作品の分析書ではないですが、日本の現代美術にかかわるギャラリー、美術館、マーケット、アーティストの人間関係などの記述が多いところが特徴的な気がします。日本のマーケットの失敗、美術館やトリエンナーレ等のアートフェアの戦略的失敗、アーティスト・批評家の日本文化の翻訳の下手さなどへの指摘が多いです。正直日本の現代美術はなんて小さな世界だろう、と思ってしまいましたが逆に考えると、そのような事情があるからこそこのような本が日本人の手によって作られることがなかったのだと思います。
個人的に面白いと思われたことは、日本で有名な美術評論家の椹木野衣や山口裕美の仕事が海外から見るとわかりにくくある意味翻訳の失敗(単純な翻訳の出来の悪さから文化的コンテクストの置き換えにいたるまで)と捕えられている点です(椹木野衣についてはあまり記述がなかったように思います)、その反面、松井みどりや村上隆の美術の文脈の翻訳は評価されています。
他にはクールジャパンの終焉についても述べられています。まあいまどきクールジャパンなんて言うのは、元ねたの英文も読まないでキャッチーな言葉を並べたくる新聞記者くらいだとは思いますが。
私的にはこの本が邦訳されると面白いことになるのではと思います。日本で現代美術をやろうと思っている人が不審に思っていることが少々暴露されるのではないでしょうか。芸大美大生の語学力を考えるとこの本の影響力が出るのは邦訳されるまで待つしかないのが残念ですが。(やや英語特有の言い回しが多い気がしますが、そんなに難しい本ではないのですけどね)
本書にひとつだけケチをつけるならば、東京藝大卒の人をgeidaiギャングと呼ぶのはどうかと思います、東京藝大卒の人はギャングに見せかけた犬のような気がするのは私だけでしょうか?